60歳の車買い替えは、10年以上乗るなら新車、5〜7年ほどで見直すなら高年式中古車を軸に考えると選びやすくなります。
ただし年齢だけで決めるのはおすすめしません。保証、安全装備、車検、消耗品、退職後の予算まで比べて、「何年乗るか」から逆算することが大切ですよ。
60歳の車買い替えは新車と中古車のどちらがいい?
結論から言えば、60歳から長く乗り、安全装備や保証の安心感を重視するなら新車、購入費を抑えて70歳前後で再び見直す可能性があるなら高年式中古車が向いています。
「新車だから正解」「中古車なら節約」と単純に分けず、まず次の6項目で比較してみましょう。
比較するポイント 新車が向くケース 高年式中古車が向くケース
所有予定年数 10年前後以上乗りたい 5〜7年程度で再検討したい
安全装備 新しい世代を選びたい 必要装備が付く年式を見極められる
保証 メーカー保証を重視する 販売店・認定中古車保証を確認できる
車検 購入後しばらく負担を分散したい 車検残や納車時整備を確認できる
購入予算 初期費用に余裕がある 購入価格を抑えたい
車両状態 個体差を気にせず選びたい 整備歴・修復歴・消耗品を確認できる
私が一つの目安として「10年」を挙げるのには理由があります。
60歳で10年間乗れば70歳です。安全装備に慣れる時間を十分取れますし、次の買い替えを70歳前後で考えるか、そのまま乗り続けるかを改めて判断できます。
一方で、「70歳になる頃にはもっと小さな車へ替えるかもしれない」「退職後に車をどれだけ使うか分からない」という方なら、最初から15年間乗る前提の高額な新車を買う必要はありません。
状態の良い3〜5年程度の高年式中古車を選び、数年後に暮らしと身体の変化を見ながら再判断する方法も合理的です。
新車のメリットは保証と車両状態の分かりやすさ
新車の大きなメリットは、前の所有者による使われ方を気にしなくていいことです。
タイヤやバッテリーなどを除けば、購入直後から「前オーナーがどんな整備をしていたのだろう」と心配する必要がありません。
保証も比較的分かりやすいですね。
一例としてトヨタでは、一般保証を新車登録日から3年間または走行距離6万kmまで、特別保証を5年間または10万kmまでと案内しています。部品や車種によって条件は異なるため、購入時には必ず対象車の保証書を確認してください。
また国土交通省の案内では、自家用乗用車の車検証の有効期間は、新車の初回が3年、その後は2年です。
つまり新車は、「車両状態」「保証」「最初の車検までの期間」を比較的把握しやすいのが強みなのです。
反面、購入価格が高くなりやすく、納車時期も車種や時期によって変わります。
60歳だからといって、退職金の大部分を使ってまで新車にこだわる必要はありません。
中古車のメリットは価格。ただし「買った後」を見る
高年式中古車の魅力は、何といっても新車より購入費を抑えられる可能性があることです。
ただし私がディーラーの店頭で相談を受けていたとき、中古車で必ず確認したいと考えていたのは、車両価格よりむしろ購入直後に何を交換する可能性があるかでした。
たとえば、
- タイヤの残り溝と製造年
- 12Vバッテリーの状態
- ブレーキなど消耗部品の状態
- 車検の残り期間
- 定期点検や整備記録
- 修復歴の有無
- メーカー保証が残っているか
- 販売店独自の保証内容
このあたりです。
車両価格が20万円安くても、納車後間もなくタイヤ、バッテリー、車検などが重なれば、「思っていたほど安くなかった」と感じることがありますよね。
逆に、整備内容や保証が明確な高年式中古車なら、60歳からの買い替え候補として十分魅力があります。
たとえばトヨタ認定中古車では、対象車に1年間・走行距離無制限の「ロングラン保証」が用意されています。保証対象などには条件がありますが、中古車でも保証を重視して選べる一例です。
つまり中古車選びでは、「中古だから安い」ではなく、「購入後2年間まで含めていくら必要か」を見ることが大切なのですよ。
60歳なら安全装備はどこまで必要?2025年の警察庁データで考える
60歳の今、普通に運転できていると、「安全装備はそこまで重視しなくてもいいのでは」と感じる方もいらっしゃるでしょう。
しかし10年以上乗るなら、選ぶべきなのは今の自分だけに合う車ではなく、70代の自分を助けてくれる車だと私は考えています。
警察庁が2026年2月に公表した「令和7年における交通事故の発生状況について」では、2025年の75歳以上の高齢運転者による死亡事故は397件でした。前年より13件、3.2%減少しています。
免許保有者10万人当たりでは、75歳以上の運転者による死亡事故が4.8件、75歳未満が2.5件で、75歳以上はおよそ2倍です。
2018年の数字だけではなく、直近の2025年でも年齢層による差が確認できるわけですね。
さらに2025年の自動車運転者による死亡事故を人的要因別に見ると、75歳以上では「操作不適」が120件で33.1%を占めています。
75歳未満では169件、10.7%です。警察庁は、75歳以上では「操作不適」の割合が75歳未満のおよそ3.1倍と整理しています。
その「操作不適」のうち、ブレーキとアクセルの踏み違いは75歳以上で31件、75歳未満で15件とされています。
もちろん、これは「75歳になれば危険だから運転してはいけない」という話ではありません。
事故統計は個人の運転能力を決めるものではなく、年齢層全体を分析したデータです。
ここから私が読み取りたいのは、経験だけに頼るのではなく、判断や操作を補助する安全技術を味方につけておく意味があるということです。
60歳から10年、15年と乗る可能性があるなら、次のような装備を確認しておきたいですね。
- 衝突被害軽減ブレーキ
- ペダル踏み間違い時の加速抑制機能
- 車線逸脱を知らせる機能
- 車線維持を支援する機能
- 後方確認を補助するカメラやセンサー
ただし安全装備は、車がすべて判断してくれる魔法の盾ではありません。
作動する速度や道路状況、天候などには条件があります。あくまで人の運転を補助する仕組みとして考えてくださいね。
中古車の場合は、ここが特に重要です。
同じ車名でも年式や改良時期によって安全装備の内容が違うからです。
Hondaのフィットを例にすると、現在の公式「新旧モデル比較」でも、2020年以降の4代目についてHonda SENSINGをはじめとする安全運転支援機能を標準装備として紹介しています。
一方、後方誤発進抑制機能や近距離衝突軽減ブレーキなど、旧世代との装備差も確認できます。
ですから中古車店で、「フィットだからHonda SENSING付きですね」「この車名なら安全でしょう」と車名だけで判断するのは早いのです。
私は中古車を選ぶなら、
年式 → グレード → 改良時期 → 実車の装備
の順で確認します。
これは60歳以降の中古車選びでは、走行距離と同じくらい大切なチェックポイントだと思っています。
60歳から乗る車は小さいほうがいい?10年後の身体で考える
60歳になったからといって、軽自動車やコンパクトカーへ必ず乗り換える必要はありません。
大切なのは、今まで必要だった車の大きさが、これからも本当に必要なのかを一度考えてみることです。
現役時代は家族を乗せ、大量の荷物を積み、休日には遠出をする。
そんな生活ならミニバンや大きなSUVにも立派な役割があります。
しかし子どもが独立し、退職後は夫婦2人で買い物と旅行が中心になると、生活は変わりますよね。
なのに車だけが「子育て全盛期」のサイズのままということは珍しくありません。
私は60歳前後のお客様と話すとき、カタログの馬力より先に、こんな質問をすることがありました。
「退職したあとの普通の一週間、この車に何人乗りますか?」
月曜日はスーパー。
水曜日は通院。
週末に夫婦でドライブ。
たまに子どもや孫を乗せる。
こうして一週間を具体的に思い浮かべると、「7人乗りが絶対必要なのか」「普段は5人乗りで十分なのか」が見えやすくなるんですよ。
車体サイズより「座面の高さ」を見てほしい
60歳以降に私が特に見てほしいのは、全長や排気量だけではなく乗り降りするときの身体の動きです。
低いセダンでは腰を深く落とす動作が必要になります。
反対に車高の高いSUVでは、人によっては足を持ち上げて乗り込むことが負担になります。
ちょうどいい高さは、身長や膝、腰の状態によって違うのです。
試乗するときは走りだけではなく、
- 運転席へ身体を大きくひねらず座れるか
- 降りるときに膝や腰へ負担を感じないか
- 前方や斜め後方を自然な姿勢で確認できるか
- 車幅の感覚をつかみやすいか
- バックモニターやメーターの文字が見やすいか
- シフトやエアコンを迷わず操作できるか
- 助手席や後席の家族も乗り降りしやすいか
を確認してみてください。
最後の「家族」も大切ですよ。
60歳で車を買い、10年間乗れば、配偶者も10歳年齢を重ねます。
さらに高齢の親を病院へ送迎することが増えるかもしれません。
自分が運転しやすいだけでなく、一緒に乗る人が乗り降りしやすいか。
ここまで考えると、60歳からの車選びはぐっと現実的になります。
退職後のお金を考えると新車と中古車のどちらが有利?
60歳の車買い替えでは、車両価格だけを比べると判断を誤りやすくなります。
私なら、買った日の価格ではなく、所有している間に出ていくお金の総額で考えます。
たとえば新車なら購入価格は高くなりやすいものの、車両状態が明確で、最初の車検まで3年あり、メーカー保証もあります。
一方、高年式中古車なら購入費を抑えられる可能性がありますが、車検時期やタイヤ、バッテリーなどの状態によって購入後の支出が変わります。
どちらが得かは、車両価格だけでは決まりません。
たとえば新車を10年間所有するなら、
購入費、税金、任意保険、車検、点検、タイヤ、バッテリー、燃料代などを10年間の時間軸で考えてみます。
中古車を5年間所有するなら、購入時にタイヤや車検が近いかどうかまで含めて見積もります。
ここで大切なのは、
「いくらの車を買えるか」ではなく、「退職後も気持ちよく維持できるか」
です。
退職金が入ると、それまで手が届かなかった車が急に現実的に見えることがあります。
もちろん、長年憧れた車を楽しむのも素敵な選択です。
ただ、退職後には住宅の修繕、家電の買い替え、医療や介護など、車以外の支出も考えておきたいところです。
「退職金があるから500万円の車」ではなく、「車に使ったあと、生活資金をどのくらい残せるか」で判断してください。
ローンや残価設定型クレジット、カーリースを使う場合も、月額だけを見ないようにしましょう。
金利、支払総額、完済時の年齢、走行距離条件、中途解約、返却時の条件などは契約によって違います。
広告で見た「月々○万円」より、契約書にある最終的にいくら払うのかのほうが重要です。

杉原健一の考察|60歳の車は「最後の一台」より出口を決めて選ぶ
60歳の車選びで、私は「人生最後の一台」という言葉にあまり縛られなくていいと思っています。
最後だと思うと、「一度くらい最高級グレードを」と予算が膨らむ人もいれば、反対に「もう年だから」と必要な装備まで我慢する人もいるからです。
私なら、60歳の車をこう考えます。
これから5年、10年を安心して過ごし、その先で続けるか見直せる一台。
新車を10年以上乗るのもいいでしょう。
高年式中古車に5〜7年乗り、65歳や70歳で生活に合わせてもう一度選び直すのも立派な選択です。
実際、私がディーラーで60代のお客様と車を考えるときは、「好きな車種は何ですか」だけで終わらせず、普段乗る人数、年間走行距離、駐車場の広さ、親御さんの送迎、退職後の使い方などを一緒に整理することがありました。
そこで話を掘り下げていくと、「大きなSUVが欲しい」と来店された方でも、実際には近所の買い物が中心で、奥様が運転するときの取り回しを最も心配していた、というように本当の優先順位が見えてくることがあります。
車選びはカタログ競争ではありません。
性能表の数字が大きい車が、その人にとって一番いい車とは限らないのですよね。
もう一つ私が60歳前後で新しい安全装備に触れておく意味があると考えるのは、70代になって初めて覚えるより、元気なうちから慣れておけるからです。
警報音が鳴ったときに何を意味するのか。
車線維持支援がどんな場面で働くのか。
踏み間違い時の加速抑制は何をしてくれるのか。
こうした機能も、付いているだけでは十分ではありません。
取扱説明書を読み、販売店で説明を受け、実際に使いながら「この表示ならこういう意味だ」と理解しておくことが安心につながります。
運転経験が一本目のロープなら、安全技術は二本目のロープ。
私は、そのくらいの付き合い方がちょうどいいと思っています。
そして70歳、75歳と年齢を重ねたら、「この車にまだ乗れるか」ではなく「この生活でまだ運転する必要があるか」を改めて考えればいいのです。
現在、運転免許証の更新期間満了日の年齢が75歳以上のドライバーは、更新時に認知機能検査等を受ける制度になっています。
ただし75歳になったら免許を返納しなければならない、という制度ではありません。
この記事で70歳や75歳を示しているのも、返納すべき年齢という意味ではなく、車と暮らしを見直す節目としてです。
60歳から15年間乗らなければ元が取れない、と考える必要もありません。
必要な間は安心して乗り、暮らしが変われば小さな車へ替える。
運転の必要がなくなれば手放す。
その「出口」を最初から考えておくほうが、かえって車選びは自由になると私は思います。
まとめ|60歳の車買い替えは「何年乗るか」で新車か中古車を決めよう
60歳で車を買い替えるなら、10年前後以上乗り、安全装備・保証・車両状態の安心を優先するなら新車が有力です。
一方、購入費を抑えたい、5〜7年程度で再び車の必要性を見直したいという方には、必要な安全装備を備えた高年式中古車も合理的な選択になります。
中古車を見るときは、走行距離だけではなく、年式、グレード、安全装備の世代、修復歴、整備記録、保証、タイヤやバッテリーなどの消耗品まで確認してください。
新車の場合も、「新しいから安心」で終わらず、10年後も扱いやすいサイズか、乗り降りしやすいか、退職後も維持費に無理がないかを見ることが重要です。
警察庁が2026年2月に公表した2025年の統計では、免許保有者10万人当たりの死亡事故件数は75歳以上が4.8件、75歳未満が2.5件でした。また75歳以上の自動車運転者による死亡事故では、「操作不適」が人的要因の33.1%を占めています。
だからこそ60歳の買い替えでは、「今はまだ必要ない」と安全装備を後回しにするより、これから10年を見据えて選んでおく価値があります。
そして最後は、カタログではなく実車に座ってみてください。
10年後の自分が運転席へ無理なく乗り込み、周囲を見渡せて、操作に戸惑わず、家計にも大きな負担を感じない。
そんな車なら、新車か中古車かにかかわらず、良い買い替えだったと思える可能性は高いでしょう。
60歳で探すべきなのは、「人生最後の一台」ではありません。
これからの暮らしに無理なく付き合い、必要なら次の選択へ気持ちよくつなげられる一台。
その視点から、新車と中古車を比べてみてくださいね。
よくある質問
60歳で車を買い替えるなら新車と中古車のどちらがおすすめですか?
10年前後以上乗る予定で、新しい安全装備や保証を重視するなら新車が選びやすいでしょう。
5〜7年程度で再び車の必要性を見直す予定なら、安全装備や車両状態を確認した高年式中古車も有力です。
中古車は何年落ちくらいが60歳から乗りやすいですか?
「○年落ちなら必ず良い」とは言えませんが、購入価格と安全装備の新しさを両立したい場合、まず3〜5年程度の高年式車から比較すると探しやすいでしょう。
ただし同じ年式でも走行距離、整備歴、修復歴、消耗品、保証は異なるため、年式だけで決めないことが重要です。
60歳から乗る車で優先したい安全装備は何ですか?
衝突被害軽減ブレーキ、ペダル踏み間違い時の加速抑制、車線逸脱を知らせる機能、車線維持支援、後方確認を助けるカメラやセンサーなどを確認したいところです。
装備内容や作動条件は車種、グレード、年式によって異なるため、候補車ごとに確認してください。
75歳まで乗れる車を選んだほうがいいですか?
必ず75歳まで乗る前提にする必要はありません。
60歳で購入したあと、65歳、70歳、75歳など生活や身体が変わる節目で運転の必要性を見直すほうが現実的です。車検の時期を「このまま乗るか考える日」にしてもいいでしょう。
杉原健一(すぎはらけんいち)
モーターライフ・アドバイザー


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