『青のミブロ 芹沢暗殺編』あらすじ解説｜“正義と裏切り”が交錯する新選組誕生の夜

その夜、斬られたのは一人の男だけではなかった。

理想、信頼、そして「仲間であり続けたい」という、
組織にとって最も脆く、しかし最も尊い幻想――。

『青のミブロ』芹沢暗殺編は、
剣戟の爽快さや勝利のカタルシスを描く物語ではない。
むしろ本作が描くのは、勝たなければならなかった者たちの後悔だ。

この章を読み終えたあと、
新選組という名前を、以前と同じ軽さでは語れなくなる。
それこそが、このエピソードの最大の価値である。

青のミブロ 芹沢暗殺編 あらすじ｜壬生浪士組、崩壊前夜

物語の舞台は幕末・京都。
尊王攘夷の思想が渦巻き、武力と思想が同時に暴走していた時代だ。

後に新選組と呼ばれる彼らは、
この時点ではまだ壬生浪士組という未成熟な集団だった。

剣は強い。だが、統率は脆い。
志は高い。だが、守るべき線引きが存在しない。

理想だけが先行し、
「何のために斬るのか」「誰を守るのか」という基準が曖昧なまま、
集団は限界を迎えつつあった。

その歪みを力で抑え込んでいた存在――
それが局長・芹沢鴨だった。

芹沢鴨とは何者だったのか｜暴君か、それとも必要悪か

芹沢鴨は、確かに問題の多い人物だった。
酒、女、金、暴力。
組織の名を盾に、度を越えた振る舞いを繰り返す。

だが一方で、
彼ほど「恐れられていた存在」もいなかった。

芹沢がいる限り、
壬生浪士組は京都で軽く扱われることはない。
秩序はなくとも、威圧という名の均衡は保たれていた。

正義は、いつも綺麗な顔をしていない。

芹沢は秩序を壊した。
同時に、秩序を生み出してもいた。
それが彼という存在の、どうしようもない本質だった。

なぜ芹沢は暗殺されなければならなかったのか

芹沢を排除する決断は、感情論ではない。

• 芹沢を生かせば、幕府から見放される
• 芹沢を斬れば、仲間殺しという十字架を背負う

どちらを選んでも、未来は地獄だった。

それでも彼らは、
「組織が続く未来」を選ぶ。

ここで重要なのは、
この選択が正義として描かれていないことだ。

これは英雄的判断ではない。
生存のための、冷酷な現実対応である。

芹沢暗殺の夜に起きたこと｜青のミブロが描く“決断”

暗殺の場面は、驚くほど静かだ。
音楽も、過剰な演出もない。

あるのは、
剣を抜くまでの沈黙と、
斬ったあとに残る空白だけ。

斬る側は分かっている。
これは誇れる行為ではない。
だが、逃げることもできない。

その覚悟の重さが、
このシーンを忘れがたいものにしている。

この夜、新選組は誕生した｜正義と裏切りの同時成立

芹沢が消えた瞬間、
壬生浪士組は新選組へと変質する。

それは進化ではない。
汚れを引き受ける覚悟を持った組織への変化だ。

• 規律を守るために、仲間を斬る
• 秩序のために、感情を切り捨てる

仲間を斬れる組織だけが、組織になれる。

この夜以降、新選組は戻れない。
もう「綺麗な正義」には戻れない。

青のミブロ 芹沢暗殺編が突きつける問い

この物語に、単純な悪役はいない。

誰もが、自分なりの正しさを信じている。
だからこそ、物語は読者に問いを投げ返す。

正義とは、守ることか。
それとも、切り捨てることか。

『青のミブロ』は答えを提示しない。
判断を委ねる。

まとめ｜この一瞬を、僕らは記憶として見る

芹沢暗殺編は、新選組の始まりではない。
後戻りできなくなった瞬間だ。

理想が現実に折り合いをつけ、
正義が血を引き受けた夜。

この一瞬を、
僕らは消費して終わらせてはいけない。

記憶として刻むこと。
それこそが、この物語への最大の敬意なのだと思う。

よくある質問（FAQ）

Q. 芹沢鴨は史実でも暗殺されたのですか？

A. はい。史実でも芹沢鴨は壬生浪士組内部の決定により粛清されたとされています。ただし詳細な経緯には諸説があります。

Q. 『青のミブロ』は史実通りの作品ですか？

A. 史実をベースにしつつ、人物の心理や関係性はフィクションとして再構成されています。

Q. 芹沢暗殺編は物語のどの位置にあたりますか？

A. 新選組誕生直前の、大きな転換点に位置する重要エピソードです。

参考・情報ソース

• 講談社『青のミブロ』公式作品ページ：https://magazine.yanmaga.jp/c/blue_miburo/
• アニメ！アニメ！：https://animeanime.jp/
• 国立国会図書館デジタルコレクション：https://dl.ndl.go.jp/

※史実に関する記述は、複数の資料をもとにした一般的解釈を参考にしています。