60代の車選びは、年間維持費なら軽自動車が有利ですが、買い替え費用まで含めると今の普通車を乗り続けるほうが得になる場合もあります。
2025年公表の参考モデルでは、軽自動車とコンパクトカーの年間維持費に57,259円の差があります。しかし、65歳から75歳までの10年間で考えると、購入費や修理費、将来の売却価格によって結論は変わるのです。
今回は、維持費の比較資料や公的な家計統計を参考に、年金生活でも無理なく車を維持するための判断方法を、具体的な数字で分かりやすく解説します。
60代は軽自動車と普通車のどちらが得?年間維持費を比較
毎年の維持費を抑えるなら軽自動車が有利ですが、買い替えを含めた総額では普通車の継続保有が有利になる場合があります。
まずは、車の種類によって年間維持費がどれくらい違うのか、具体的な数字から確認してみましょう。
軽自動車・コンパクトカー・ミニバンの年間維持費
中古車販売などを手がける株式会社ネクステージが2025年5月2日に更新した軽自動車と普通車の維持費に関する解説では、2025年3月時点の条件を用いた比較モデルが紹介されています。
元記事で取り上げられている年間維持費の参考値を整理すると、次のようになります。
車の種類 年間維持費 軽自動車との差
軽自動車 282,424円 基準
コンパクトカー 339,683円 +57,259円
ミニバン 417,850円 +135,426円
※2025年5月2日更新のネクステージの解説で紹介された参考モデル値です。年間走行距離10,000km、ガソリン価格177円/L、駐車場代月7,000円などを想定した比較として扱っています。元資料の費用項目ごとの算定条件については完全な原文照合ができていないため、実際の見積額ではありません。
なお、本記事では軽自動車以外の登録乗用車を、一般的な呼び方に合わせて「普通車」と表記します。
法律上の普通自動車と小型自動車は区別されますが、ここではコンパクトカーも比較対象に含めています。
参考モデルによると、軽自動車とコンパクトカーの差は年間57,259円です。
月額に換算すると約4,772円、10年間では572,590円になります。
ミニバンとの差は年間135,426円ですから、10年間なら1,354,260円という大きな金額になります。
ただし、これは維持費が10年間変わらないと仮定した単純計算です。
実際には、燃料価格や保険料、修理費、税制などが変化します。
60代の車選びは3つの結論に分かれる
年間維持費の表だけを見ると、軽自動車を選べば間違いないように感じるかもしれません。
しかし、実際の車選びでは次のように判断が分かれます。
- 軽自動車への乗り換えが有利な場合: 現在の車が大型で維持費が高く、比較的少ない追加負担で軽自動車に買い替えられる。
- 普通車を乗り続けるほうが有利な場合: 今の車の状態が良く、買い替えに大きな費用が必要になる。
- ハイブリッド普通車が有利な場合: 年間走行距離が多く、燃料代や快適性も重視する。ただし購入費との比較が必要。
私は、60代の車選びで最初に確認したいのは、軽自動車と普通車のどちらが安いかではなく、今の車を手放すことで本当に家計が改善するかという点だと考えています。
例えば、年間5万円ほど節約できても、そのために100万円を追加で支払うなら、節約効果を回収するまで長い時間がかかります。
一方、現在のミニバンが古くなり、高額な修理も必要になっているなら、軽自動車への乗り換えが合理的な選択になるかもしれません。
この違いを理解することが、年金生活を見据えた車選びの第一歩です。
年間維持費には何が含まれる?
車の維持費は、主に税金、保険料、車検費用、燃料代、駐車場代、メンテナンス費用で構成されます。
参考モデルの金額を理解しやすくするため、年間費用の内訳例を示します。
費用項目 軽自動車 コンパクトカー
自動車税・軽自動車税 10,800円 30,500円
自動車重量税(年額換算) 3,300円 8,200円
自賠責保険(年額換算) 8,870円 8,825円
任意保険 50,000円 55,000円
車検基本料金(年額換算) 15,000円 20,000円
ガソリン代 80,454円 93,158円
駐車場代 84,000円 84,000円
メンテナンス代 30,000円 40,000円
合計 282,424円 339,683円
※上表は比較を説明するための費用配分例であり、ネクステージの原資料に掲載された内訳との完全一致を確認したものではありません。任意保険、整備費、車検基本料金などはモデル上の設定額です。法定費用も車両条件や契約期間によって変わります。
この表で注目したいのは、税金だけでなく、任意保険や整備費にも差があるという点です。
ただし、保険料や修理費は車種だけで決まるものではありません。
例えば、軽自動車でも高額な部品交換が必要になれば、普通車より整備費が高くなる場合があります。
そのため、年間57,259円という差額は、すべての家庭に当てはまる節約額ではありません。
自分の車の実際の維持費と比較するための出発点として活用してくださいね。
軽自動車と普通車の税金・車検・保険料はいくら違う?
軽自動車と1.5Lクラスの普通車では、自動車税だけで年間19,700円の差になる場合があります。さらに、自動車重量税や整備費にも違いが生じます。
60代からは走行距離が減っても必要になる固定費を確認することが重要です。
自動車税は10年間で約20万円の差
自家用乗用の軽自動車で、2015年4月1日以降に最初の新規検査を受けた車の軽自動車税種別割は、標準税率で年間10,800円です。
一方、2019年10月1日以降に初回新規登録された自家用乗用の登録車では、排気量によって自動車税種別割が変わります。
車両区分 年間税額
軽自動車 10,800円
普通車・1.0L以下 25,000円
普通車・1.0L超〜1.5L以下 30,500円
普通車・1.5L超〜2.0L以下 36,000円
普通車・2.0L超〜2.5L以下 43,500円
※自家用乗用車の標準税率です。初回登録時期、経年重課、減免などによって異なります。
1.5Lクラスの普通車と軽自動車を比較すると、年間19,700円の差です。
税率が変わらず、経年重課なども発生しないと仮定すれば、10年間で197,000円になります。
ここで大切なのは、走行距離が短くなっても、この税負担が基本的には減らないことです。
年間3,000kmしか走らなくても、年間10,000km走っても、同じ税区分なら原則として税額は変わりません。
退職後に通勤がなくなる方にとって、固定費の違いは見逃せませんね。
13年を超える車は経年重課に注意
ただし、長期間保有する場合には、車の年式も重要です。
一定の条件に該当する自家用乗用の軽自動車では、初回新規検査から13年を経過すると、軽自動車税種別割が年間12,900円になる場合があります。
登録車にも、一定年数を経過した車両に対する重課制度があります。
また、自動車重量税にも、13年超や18年超で税負担が増える仕組みがあります。
つまり、65歳で8年落ちの車に乗っている場合、75歳になるまでの10年間に、車齢13年を超える時期が訪れます。
この影響を考えずに現在の税額を10倍すると、実際の負担を少なく見積もる可能性があります。
なお、ハイブリッド車など一部の車両では、環境性能や制度上の区分によって扱いが異なります。
中古車を購入するときは、販売店で初回登録年月、燃料の種類、実際に適用される税額を確認しましょう。
自動車重量税は2年間で18,000円の差になる場合も
自動車重量税についても、軽自動車は有利になりやすい傾向があります。
登録から13年未満で、エコカー減税などを適用しない自家用乗用車の継続検査時の基本的な税額を比較すると、次のようになります。
車両区分 2年分の重量税
軽自動車 6,600円
普通車・1.0t以下 16,400円
普通車・1.5t以下 24,600円
普通車・2.0t以下 32,800円
軽自動車と車両重量1.5t以下の普通車では、2年間で18,000円の差です。
年平均に換算すると9,000円になります。
ただし、これは減税や経年重課を反映しない基本税額の比較です。
実際の納税額は、車両重量、環境性能、初回登録年月などによって変わります。
特にハイブリッド車を検討する場合は、軽自動車より重量税が高いと決めつけないことが大切です。
2026年10月時点で購入や車検を検討する際は、国土交通省が案内する自動車重量税の制度や、販売店の見積書で最新の適用条件を確認してください。
任意保険は軽自動車なら必ず安い?
任意保険については、軽自動車のほうが安くなる傾向があるものの、必ずそうなるわけではありません。
ネクステージの2025年5月更新資料では、損害保険料率算出機構の2023年度に関する統計を参考に、軽自動車約50,000円、小型車約55,000円、普通車約72,000円という年間保険料の水準が紹介されています。
ただし、これらは同一の運転者、補償内容、契約条件で比較した見積額ではありません。
保険料は、等級、事故歴、運転者の範囲、使用目的、年間走行距離、車両保険の有無などによって変わります。
さらに、車の型式ごとの保険料率の違いも影響します。
そのため、60代で車を買い替える際には、候補車ごとに同じ補償条件で見積もりを取りたいところです。
私は、保険料を安くするために必要な補償まで削ることはおすすめしません。
特に対人・対物賠償や人身傷害などは、保険料と補償内容のバランスを確認することが大切です。
車検費用は車の状態によって逆転する
車検費用についても、軽自動車のほうが安くなりやすいものの、必ずしもそうとは限りません。
自家用乗用車の車検は、新車購入後の初回が原則3年、その後は2年ごとです。
車検時には、重量税、自賠責保険料、検査手数料などの法定費用に加えて、点検・整備料金が必要になります。
法定費用は制度や車両条件によって決まりますが、整備費用は車の状態で大きく変わります。
例えば、軽自動車でもタイヤ4本、バッテリー、ブレーキ関連部品の交換が重なれば、まとまった支出になります。
一方、状態の良いコンパクトカーなら、追加整備が少なく済む場合もあります。
以前の比較記事では、軽自動車66,240円、普通車88,007円という車検費用の参考例も紹介されていました。
しかし、この数字は算定基準日や費用内訳を十分に確認できていないため、今回は現在の車検費用を示す比較値として採用しません。
購入前には、候補車の法定費用と整備料金を分けた見積もりを確認することが、正確な比較につながります。
年間3,000km・5,000km・10,000kmではガソリン代がどれくらい違う?
年間走行距離が短い60代では、軽自動車とガソリンコンパクトカーの燃料代の差は小さくなります。一方、燃費の良いハイブリッド普通車なら、軽自動車より燃料代が安くなる場合があります。
退職後の生活を想定して、走行距離別に比較してみましょう。
軽自動車・ガソリン普通車・ハイブリッド車を比較
今回は、特定の車種ではなく、次の燃費を仮定します。
- 軽自動車:22km/L
- ガソリンコンパクトカー:19km/L
- ハイブリッドコンパクトカー:28km/L
ガソリン価格は170円/Lで統一します。
これらは計算用の設定値であり、実際の燃費や2026年10月現在のガソリン価格を保証するものではありません。
年間走行距離 軽自動車 ガソリン普通車 HV普通車
3,000km 約23,182円 約26,842円 約18,214円
5,000km 約38,636円 約44,737円 約30,357円
10,000km 約77,273円 約89,474円 約60,714円
※ガソリン価格170円/L、設定燃費が一定の場合の概算です。HVはハイブリッド車を指します。
年間3,000kmの場合、軽自動車とガソリン普通車の燃料代の差は約3,660円です。
月額にすると約305円しか変わりません。
一方、年間10,000kmなら、差は約12,201円になります。
つまり、走行距離が短いほど、燃料代の節約を目的とした買い替え効果は小さくなるのです。

ハイブリッド普通車なら燃料代が逆転する
今回の試算で注目したいのは、ハイブリッドコンパクトカーです。
年間5,000kmの場合、燃料代は約30,357円となり、軽自動車より約8,279円安くなります。
年間10,000kmでは、軽自動車より約16,559円安くなる計算です。
普通車だから必ず燃料代が高いわけではないことが分かりますね。
ただし、ハイブリッド車は同じクラスのガソリン車より購入価格が高くなる場合があります。
例えば、購入価格に30万円の差があり、燃料代の節約が年間1万円なら、単純計算で購入価格差を回収するまで30年かかります。
もちろん、税金、整備費、売却価格などを含めれば結果は変わります。
それでも、燃費の良さだけで高額な車を選ぶのは慎重に考えたいところです。
退職後は燃費より固定費が重要になることも
例えば、現役時代に年間12,000km走っていた方が、退職後は年間4,000kmになったとします。
燃費とガソリン価格が同じなら、燃料代はおおむね3分の1になります。
しかし、自動車税や車検関連費用は、走行距離に比例して減るわけではありません。
このため、退職後は燃費性能よりも、税金や購入費の差が相対的に重要になる場合があります。
ただし、走行距離が短くても、買い物や通院に車が欠かせない方もいますよね。
車の必要性は走行距離だけでは判断できません。
どのくらい走るのかだけでなく、どんな場面で使うのかを考えてみましょう。
年金生活で車の維持費はいくら負担になる?公的統計から考える
年金生活では、車の維持費を毎月の生活費の中でどれくらい負担できるかが重要です。月20万円の生活費予算を仮定すると、参考モデルの軽自動車維持費は約11.8%、コンパクトカーでは約14.2%を占めます。
さらに、車の購入費やローン返済があれば、家計への負担は大きくなります。
総務省の家計調査から見る高齢者世帯の生活費
総務省統計局が公表した「家計調査報告 家計収支編 2024年平均結果」では、65歳以上の夫婦のみの無職世帯について、次の平均値が示されています。
家計項目 月平均
実収入 252,818円
可処分所得 222,462円
消費支出 256,521円
可処分所得と消費支出の差 -34,059円
※2024年平均の全国統計です。可処分所得と消費支出の差は掲載値から計算したもので、端数処理によって公表資料の表示と1円程度異なる場合があります。
可処分所得とは、税金や社会保険料などを差し引いた後、生活に使えるお金のことです。
この統計では、消費支出が可処分所得を月平均約3.4万円上回っています。
不足分は貯蓄の取り崩しなどで補われることになりますが、すべての高齢者世帯が同じ赤字という意味ではありません。
また、消費支出には交通・通信費なども含まれているため、車の維持費をそのまま追加すると二重計上になる可能性があります。
この統計は2024年の実績であり、2026年の最新家計水準を示すものではありません。
今回は比較条件を明確にするために過年度の確定値を使っていますが、実際の家計計画では総務省の最新の家計調査も確認してください。
2025年度の標準的な年金額は月232,784円
厚生労働省が公表した2025年度の年金額改定に関する資料では、標準的な厚生年金の夫婦2人分の年金額として、月232,784円が示されています。
これは、平均的な収入で40年間就業した場合の老齢厚生年金と、夫婦2人分の老齢基礎年金を組み合わせたモデルです。
すべての夫婦が、この金額を受給できるわけではありません。
実際の年金額は、加入期間、現役時代の報酬、受給開始時期などによって異なります。
また、この数字は2025年度の金額であり、2026年度の最新年金額ではありません。
年金額は年度ごとに改定されるため、2026年10月時点の実際の受給見込額については、厚生労働省の2026年度年金額改定資料や日本年金機構の「ねんきんネット」で確認する必要があります。
私は、車の購入予算を考える前に、まず自分の年金見込額と退職後の手取り収入を確認することが大切だと思います。
平均的な年金額ではなく、自分の家計で支払える金額を基準にするためです。
月20万円の生活費予算なら車の負担はどれくらい?
ここでは、車の維持費を含めて月20万円で生活する家庭を仮定します。
先ほどの年間維持費を月額に換算すると、次のようになります。
車の種類 月平均維持費 予算に占める割合
軽自動車 約23,535円 約11.8%
コンパクトカー 約28,307円 約14.2%
ミニバン 約34,821円 約17.4%
※車両購入費やローン返済は含みません。月20万円は比較用の仮定であり、公的な標準生活費ではありません。
軽自動車でも、毎月の生活費予算の約12%を車の維持に使う計算です。
さらに月20,000円のローン返済があれば、軽自動車の維持費と合わせて月約43,500円になります。
月20万円の予算に対する割合は約21.8%です。
車の購入時には、月々のローン返済額だけでなく、税金や保険料、車検費用まで含めて考える必要があります。
例えば、年間維持費が30万円なら、毎月25,000円を車用の予算として確保する方法があります。
毎月一定額を積み立てておけば、車検や保険更新などのまとまった支払いにも対応しやすくなります。
ただし、突発的な修理費や次の買い替え資金は、別に備えておくと安心です。
自宅駐車場があるなら負担は変わる
今回の参考モデルには、月7,000円、年間84,000円の駐車場代が含まれています。
10年間では840,000円になります。
一方、自宅に駐車スペースがあり、別途駐車場料金を支払っていない方もいるでしょう。
その場合、参考モデルから駐車場代を除くと、軽自動車の年間維持費は198,424円になります。
コンパクトカーは255,683円です。
ただし、両方の車で同じ駐車場料金を支払うなら、車種間の差額は変わりません。
ここで重要なのは、車を買い替えることで減る費用と、変わらない費用を区別することです。
私は、車の維持費を考えるとき、一般的な平均額よりも、自分の家計から実際に出ていく金額を優先したいと考えています。
65歳から75歳までの10年間ではどちらが得?買い替え費用と修理費を比較
65歳から75歳までの10年間では、軽自動車の維持費が安くても、購入費や修理費、売却価格によって総額が逆転します。
ここでは、まず単純な回収計算を行い、その後、具体的な中古車への買い替えケースを考えてみましょう。
買い替え実質負担50万円なら回収まで約8.7年
2025年公表の参考モデルでは、軽自動車とコンパクトカーの年間維持費の差は57,259円です。
この差が10年間変わらないと仮定すると、節約累計は572,590円になります。
仮に、普通車から軽自動車への買い替えによって、当初50万円の追加支出が必要になったとします。
単純な回収期間は次のとおりです。
500,000円 ÷ 57,259円 = 約8.7年
65歳で乗り換えた場合、維持費の節約累計が50万円を超えるのは73〜74歳ごろです。
10年間の節約累計から追加支出50万円を差し引くと、72,590円が残ります。
ただし、これは購入時の支出と維持費差だけを比較した単純回収計算です。
現在の普通車の将来価値や軽自動車の売却価格、修理費の違いなどは含んでいません。
買い替え実質負担100万円なら回収まで約17.5年
今度は、買い替えに100万円の追加支出が必要になる場合です。
年間57,259円の節約なら、単純回収期間は約17.5年です。
65歳で乗り換えた場合、回収時期は82〜83歳ごろになります。
75歳までの10年間では、節約累計572,590円に対して、追加支出は100万円です。
差し引き427,410円の追加負担が残る計算になります。
つまり、維持費の節約だけを目的にするなら、必ずしも買い替えが有利とはいえません。
もちろん、新しい車には安全装備や快適性、故障リスクの低減といった価値があります。
ただし、それらの価値と金銭的な節約効果は分けて考えることが大切です。
具体例:8年落ちの1.5L普通車から中古軽自動車へ買い替える場合
ここからは、より実際の車選びに近いケースを考えます。
65歳の方が、現在8年落ちの1.5Lガソリンコンパクトカーに乗っていると仮定しましょう。
その車を継続保有する場合と、150万円の中古軽自動車へ乗り換える場合を比較します。
比較する車の条件
項目 普通車を継続保有 中古軽自動車へ買替
65歳時点の車齢 8年 3年
排気量 1.5L 660cc
65歳時点の車両価値 30万円 購入価格150万円
購入諸費用 なし 10万円
年間走行距離 5,000km 5,000km
75歳時点の車齢 18年 13年
※すべて比較用の仮定です。実在する特定車両の販売価格、査定額、将来価値を示すものではありません。
現在の普通車は65歳時点で30万円の価値があると仮定します。
中古軽自動車を購入する場合は、車両価格150万円と諸費用10万円の合計160万円を支払い、現在の普通車を30万円で売却します。
このとき、買い替えによる当初の追加支出は130万円です。
一方、普通車を継続保有する場合は、65歳時点で新たな車両購入費を支払わないものとします。
10年間の税金・燃料代・修理費を独自試算
次に、65歳から75歳までの10年間に必要となる費用を考えます。
今回のモデルでは、年間5,000km走行、ガソリン価格170円/L、燃費は普通車19km/L、軽自動車22km/Lとします。
また、普通車は車齢8年から18年、軽自動車は3年から13年になるため、経年重課の影響を概算に含めます。
ただし、実際の税額は初回登録年月、課税基準日、車検時期、環境性能などで異なります。
ここでは年ごとの税額を厳密に確定するのではなく、重課が発生する時期を考慮した概算予算として扱います。
10年間の費用項目 普通車継続 軽自動車買替
自動車税・軽自動車税 33万円 11万円
自動車重量税 16万円 4万円
燃料代 約44.7万円 約38.6万円
任意保険 55万円 50万円
車検基本料金・検査関連費用 12万円 10万円
自賠責保険 9万円 9万円
通常メンテナンス費 40万円 30万円
追加修理費 35万円 15万円
維持費合計 約244.7万円 約207.6万円
※独自の仮想試算です。税額は経年重課を考慮した概算予算であり、法定税額を年別に積み上げた確定値ではありません。車検・保険・整備・追加修理費も仮定値です。駐車場代は両車同額として除外しています。燃料代などは表示時に丸めています。
今回のモデルでは、10年間の維持費は軽自動車のほうが約37.1万円安くなります。
年間平均にすると約3.7万円の差です。
先ほどの参考モデルでは年間約5.7万円の差がありましたが、今回は走行距離を5,000kmに設定し、費用条件も変更しているため、差額が小さくなっています。
このように、走行距離や車齢、修理費の想定を変えるだけで、維持費の差は変わるのです。
75歳時点の売却価格まで含めるとどうなる?
ここで、さらに重要なのが将来の売却価格です。
仮に75歳時点で、普通車は5万円、軽自動車は20万円で売却できるとします。
これも将来の中古車相場を予測したものではなく、計算の仕組みを理解するための設定です。
両方の選択肢を65歳時点から比較すると、次のようになります。
比較項目 普通車継続 軽自動車買替
65歳時点の追加支出 0円 130万円
10年間の維持費 約244.7万円 約207.6万円
75歳時点の売却収入 5万円 20万円
10年間の正味支出 約239.7万円 約317.6万円
普通車継続との差 基準 約77.9万円高い
※65歳時点で普通車を継続保有する案を基準とした、今後10年間の追加キャッシュフロー比較です。買い替え案では160万円の購入支出から30万円の下取り収入を差し引いています。両案とも75歳時点の売却収入を差し引き、65歳時点の普通車の価値を二重計上しないようにしています。
このケースでは、軽自動車に買い替えると10年間の維持費は安くなります。
しかし、購入時の追加支出が大きいため、75歳時点までの正味支出は普通車を乗り続けるほうが約77.9万円少なくなります。
つまり、維持費が安い車と、10年間の総支出が少ない車は、必ずしも同じではないのです。
私は、この違いを60代の車選びで特に知っていただきたいと思っています。
なお、今回の比較では、車両購入費をローンで支払う場合の金利、物価変動、事故修理、予想外の故障などは含んでいません。
また、75歳までに車を手放す場合や、さらに長く保有する場合には、結果が変わります。
修理費が増えたら結論は変わる?
ここで、普通車の追加修理費が予想より増えた場合を考えてみましょう。
今回のモデルでは、普通車の追加修理費を10年間で35万円と仮定しました。
もし実際には100万円必要になった場合、当初の想定より65万円多くかかります。
その結果、普通車を継続保有する場合の正味支出は約304.7万円になります。
軽自動車へ買い替える場合の約317.6万円との差は、約12.9万円まで縮まります。
さらに大きな修理が必要になれば、買い替えが有利になる可能性も出てきます。
ただし、古い車だから必ず高額な修理が発生するわけではありません。
逆に、中古軽自動車でも購入後に予想外の修理が必要になることはあります。
購入時点で将来の故障を正確に予測することはできません。
だからこそ、私は車検前に、今後2〜3年で交換が必要になりそうな部品について、整備工場に確認することをおすすめします。
修理して乗り続ける費用と、買い替える費用を具体的に比較するためです。
買い替え費用の損益分岐点を考える
今回の独自モデルでは、軽自動車の10年間の維持費は普通車より約37.1万円安くなりました。
さらに75歳時点の売却価格は、軽自動車のほうが15万円高いと仮定しています。
つまり、維持費の節約と売却価格の差を合わせた軽自動車側の有利額は、約52.1万円です。
したがって、65歳時点の買い替え追加支出が約52.1万円以内なら、今回の条件では軽自動車が総支出でも有利になります。
反対に、追加支出が約52.1万円を超えると、普通車の継続保有が有利になります。
これが今回の仮定における損益分岐点です。
実際の車選びでは、現在の車の査定額、購入候補車の支払総額、予想修理費を使って、この分岐点を計算すると判断しやすくなります。
単に年間維持費を比較するよりも、ずっと実用的な考え方だと思います。
60代の車選びで後悔しないための3つの判断基準
60代の車選びでは、維持費の安さに加えて、普段の使い方、運転のしやすさ、将来の生活資金を確認することが大切です。
私は、次の三つを判断基準にすることをおすすめします。
1.近距離中心か、高速道路や長距離移動が多いか
まず、車をどのような場面で使うのかを整理しましょう。
近所の買い物や通院が中心なら、軽自動車の扱いやすさが魅力になります。
一方、高速道路を頻繁に利用する方や、夫婦で長距離旅行を楽しみたい方は、普通車の快適性が重要になる場合があります。
例えば、近距離中心で普段の乗車人数が1〜2人なら、軽自動車でも十分に使える可能性があります。
車体がコンパクトなので、狭い道路や駐車場でも取り回しやすい車種が多いですね。
ただし、軽自動車でも背の高い車種やターボ車、4WD車などは燃費や購入費が変わります。
また、軽自動車の乗車定員は基本的に4人です。
家族や友人を5人乗せる機会があるなら、普通車が必要になります。
反対に、普通車でも小型のハイブリッド車なら、燃料代を抑えながら長距離移動を楽しめる場合があります。
私は、車の大きさを決める前に、普段の乗車人数と年間の高速道路利用回数を確認したいと考えています。
この二つだけでも、候補車をかなり絞り込めるからです。
2.安全装備と乗り降りのしやすさを確認する
60代から70代にかけて長く乗る車を選ぶなら、安全装備や使いやすさも大切です。
衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い時の加速抑制機能などは、車種や年式、グレードによって搭載状況が異なります。
また、同じ名称の装備でも、検知できる対象や作動条件に違いがあります。
安全装備があるからといって事故を完全に防げるわけではありませんが、万が一への備えとして確認する価値があります。
車の安全性能を比較する際には、国土交通省と独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)が実施する自動車アセスメントも参考になります。
ただし、評価年度や試験条件が異なる車両の点数を、そのまま単純比較しないことが大切です。
さらに、私は試乗時に次の動作を確認してほしいと思います。
- 運転席への乗り降りが無理なくできるか。
- 前方や斜め後方の視界が確保しやすいか。
- アクセルとブレーキを自然な姿勢で操作できるか。
- 駐車するときに車体の位置を把握しやすいか。
- 荷室へ買い物袋などを無理なく積み込めるか。
例えば、座面が低すぎる車では、立ち上がるときに負担を感じる場合があります。
反対に、座面が高すぎる車では、乗り込む際に足を大きく上げる必要があるかもしれません。
大切なのは、カタログ上の車高ではなく、実際の乗り降りのしやすさです。
また、荷室の床が高い車では、重い荷物を積む際に負担を感じることもあります。
こうした使いやすさは、燃費や税金の比較表には表れません。
65歳で購入して10年間乗るなら、75歳になったときにも使いやすいかを想像してみたいですね。
3.購入後に生活資金をどれだけ残せるか
最後に確認したいのが、車を購入した後の生活資金です。
例えば、65歳で100万円を使って車を買い替える場合、その100万円は車の購入に使われます。
一方、今の車を乗り続ければ、少なくともその時点での買い替え支出を避けられます。
手元に残った資金は、住宅の修繕、医療費、旅行、将来の車の修理などに備えることができます。
もちろん、現在の車に大きな故障リスクがあるなら、買い替えたほうが安心できる場合もあります。
ただし、年金生活では、毎月の支出だけでなく、まとまった貯蓄をどれだけ残せるかも重要です。
例えば、65歳で7年ローンを組めば、完済は72歳ごろになります。
その間も車検や税金、保険料は必要です。
私は、月々のローン返済額だけを見て購入を決めるのではなく、支払総額と完済時の年齢を確認したいと考えています。
さらに、75歳になったときに車を買い替えるのか、引き続き乗るのか、運転を卒業する可能性があるのかも考えておくとよいでしょう。
これは、年齢だけで運転の可否を決めるという意味ではありません。
健康状態や運転能力、生活環境に応じて、将来の選択肢を持っておくということです。
今の普通車を乗り続ける・中古軽自動車へ買い替える・HV普通車を選ぶ
ここまでの比較を踏まえると、60代の車選びには大きく三つの方向性があります。
今の普通車を乗り続ける選択
現在の車の状態が良く、運転にも不満がない場合は、継続保有が有力です。
特に買い替えに大きな追加費用が必要になるなら、年間維持費が多少高くても、10年間の総支出では有利になる場合があります。
ただし、車齢が高くなる場合は、今後の修理費や経年重課を確認しましょう。
中古軽自動車へ買い替える選択
近距離移動が中心で、乗車人数が少なく、毎年の固定費を抑えたい方には軽自動車が向いています。
現在の車を比較的高く売却でき、状態の良い中古軽自動車へ少ない追加負担で乗り換えられるなら、総支出でも有利になる可能性があります。
ただし、中古車では年式、走行距離、修復歴、整備履歴、保証内容を確認することが大切です。
ハイブリッド普通車を選ぶ選択
年間走行距離が多く、高速道路や長距離移動も楽しみたい方には、ハイブリッドコンパクトカーも候補になります。
燃費性能によっては軽自動車より燃料代を抑えられる場合がありますが、購入価格や税金、整備費まで含めた比較が必要です。
特に年間走行距離が短い場合は、燃料代の節約だけで購入価格差を回収することが難しくなることがあります。
どの選択肢にも、それぞれの良さがあります。
私は、軽自動車が安いからという理由だけで選ぶのでも、普通車のほうが快適そうだからという印象だけで決めるのでもなく、実際の生活に合わせて比較することが大切だと思います。
考察|60代の車選びは維持費の節約より「10年間の安心」を重視したい
ここまでの数字を整理すると、軽自動車には税金や維持費を抑えやすいという明確なメリットがあります。
しかし、65歳から75歳までの10年間を考えると、毎年の維持費だけでは判断できないことも分かります。
私が特に重要だと感じるのは、車を買い替えることで、家計の負担が本当に減るのかという点です。
例えば、現在の普通車がまだ十分に使える状態なら、年間数万円の節約を目的に高額な中古軽自動車へ買い替えることが、必ずしも合理的とはいえません。
一方、現在の車が古くなり、今後の修理費が大きくなりそうなら、買い替えによって支出を安定させられる可能性があります。
この違いは、車の種類よりも、現在の車の状態と買い替え条件によって生まれます。
退職後は「走行距離の変化」が判断を左右する
60代の車選びでは、退職前と退職後で車の使い方が変わることがあります。
通勤で毎日使っていた車が、退職後は買い物や通院中心になるかもしれません。
その場合、年間走行距離が減り、燃料代の差も小さくなります。
私は、退職後の車選びでは、現役時代の走行距離をそのまま使わないことが重要だと考えています。
年間10,000km走る生活と、年間3,000kmしか走らない生活では、燃費の価値が大きく変わるからです。
一方、税金や車検関連費用は、走行距離が減っても一定の負担が残ります。
そのため、近距離移動が中心になる方ほど、購入価格や固定費の差を重視したいところです。
維持費の安さと運転の安心感は別の価値
もう一つ考えたいのは、運転の安心感です。
軽自動車はコンパクトで扱いやすい一方、普通車には車種によって長距離移動の快適性や室内の余裕などの魅力があります。
ただし、軽自動車だから安全性が低い、普通車だから必ず安全という単純な判断はできません。
安全性能は車種、年式、装備、設計などによって異なります。
私は、車を選ぶ際には、毎日安心して運転できるかを重視したいと思います。
例えば、狭い道での運転に不安がある方なら、車体の小さな軽自動車が扱いやすいかもしれません。
反対に、高速道路を頻繁に利用する方なら、実際に試乗して走行時の安定感や疲れにくさを確認したいところです。
維持費の数字だけでは分からない価値が、車にはあるのです。
75歳まで乗るなら「買い替えない自由」も残しておきたい
私は、60代からの車選びでは、購入後の生活資金に余裕を残すことも大切だと考えています。
新しい車を購入すれば、安全装備や快適性が向上する場合があります。
しかし、そのために貯蓄を大きく減らしてしまうと、将来の生活に不安が残るかもしれません。
逆に、今の車を乗り続けることで、旅行や趣味、家族との時間に使える資金を残せる場合もあります。
もちろん、修理費が増えたり、運転しにくさを感じたりするなら、買い替えを検討することも必要です。
大切なのは、今すぐ買い替えることだけを正解にしないことです。
車の状態を確認しながら、必要になったときに買い替えるという選択肢もあります。
私は、60代の車選びで最も大切なのは、安い車を選ぶことではなく、無理のない支出で、自分らしい移動を続けられることだと思っています。
まとめ|60代は軽自動車と普通車の維持費を10年間の総額で比較しよう
60代の車選びでは、軽自動車のほうが年間維持費を抑えやすい傾向があります。
2025年公表の参考モデルでは、軽自動車282,424円、コンパクトカー339,683円、ミニバン417,850円という年間維持費が紹介されていました。
年間10,000km走行などの条件では、軽自動車とコンパクトカーの差は57,259円です。
ただし、この差額が10年間続いたとしても、買い替え費用によっては普通車を乗り続けるほうが得になります。
今回の独自モデルでは、65歳時点で8年落ちの普通車を継続保有する場合と、3年落ちの中古軽自動車へ買い替える場合を比較しました。
その結果、設定した購入費、修理費、売却価格の条件では、普通車の継続保有が10年間で約77.9万円有利になりました。
もちろん、これは仮想モデルの結果であり、すべての家庭に当てはまるものではありません。
実際の判断では、現在の車の査定額、購入候補車の支払総額、今後の修理費、走行距離、将来の売却価格を確認することが大切です。
さらに、安全装備や乗り降りのしやすさ、普段の使い勝手も忘れずに比較しましょう。
60代からの車選びは、単に安い車を探すことではありません。
これからの暮らしに必要な移動を、無理のない家計負担で安心して続けられる一台を選ぶことです。
焦らず、自分の生活に合った車をじっくり考えてみてくださいね。
よくある質問
60代は軽自動車と普通車のどちらが維持費を安くできますか?
一般的には、軽自動車のほうが税金や一部の維持費を抑えやすい傾向があります。
2025年公表の参考モデルでは、年間10,000km走行などの条件で、コンパクトカーより年間57,259円安くなる計算です。ただし、実際の差額は車種や使用条件によって変わります。
年金生活で車の維持費は月いくら必要ですか?
参考モデルでは、軽自動車が月約23,535円、コンパクトカーが月約28,307円です。
ただし、車両購入費やローン返済は含まれていません。駐車場代、走行距離、保険条件などによって実際の負担は変わります。
65歳で普通車から軽自動車に買い替えるべきですか?
維持費を抑えたい場合、軽自動車への乗り換えは有力な選択肢です。
ただし、買い替え費用が大きい場合は、普通車を乗り続けるほうが10年間の総支出を抑えられることもあります。現在の車の状態と買い替え後の総費用を比較して判断しましょう。
杉原健一(すぎはら けんいち)
モーターライフ・アドバイザー


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