60代でもロードスターは十分楽しめます。ただし、低い着座姿勢による乗り降りの負担だけは、購入前に実車で確かめておきたいポイントです。
「60代になってからロードスターなんて、少し無理があるかな」「乗り降りがつらくならないだろうか」と迷っている方もいらっしゃるでしょう。
実際には、還暦を機にマツダ・ロードスターRFを購入し、6年間で8万km以上を走りながら全国各地へ出かけているオーナーもいます。一方で、スポーツカー特有の低いシート位置は、一般的な乗用車や軽ハイトワゴンより乗降時の負担が大きくなりやすいのも事実です。
60代でロードスターは楽しめる?還暦から始めた実例
結論からいえば、年齢だけを理由にロードスターを諦める必要はありません。
そのことをよく表しているのが、2025年6月22日にGAZOOで紹介された「K&N」さんのカーライフです。
K&Nさんは、ちょうど還暦を迎えた時期に2019年式のマツダ・ロードスターRF VS(NDERC型)を新車で購入しました。
しかも単なる「近所を少し走る趣味車」ではありません。
購入から約6年で、走行距離はすでに8万3000kmに到達。休日には近所だけでなく、山陰地方や九州などへロードスターで出かけ、全国のクルマ仲間と交流しているそうです。
つまり実例を見る限り、「60歳を過ぎたらロードスターで長距離を楽しめない」ということではないのですね。
K&Nさんは幼少期からクルマ好きだった父親の影響を受け、父親と費用を折半して購入したスカイラインジャパンをはじめ、セリカXX、プレリュードなどを乗り継いできました。
その後はビスタ、フォルクスワーゲン・ポロ、マーチといったファミリーカーにも乗りましたが、2008年には自分専用車としてMR2(SW20型)のTバールーフを中古で購入しています。
MR2には10年以上乗り、走行距離は23万kmまで伸びました。
ただ、長期間・長距離を走れば消耗部品や経年劣化によるトラブルは避けにくくなります。そこで2014年ごろから次の愛車探しを始め、20台以上を試乗したそうです。
候補には初代NSXもありました。
しかし、車検やメンテナンスだけでも大きな費用がかかる可能性を考え、新しいクルマへ方向転換。その結果選んだのがND型ロードスターでした。
ここは、60代のクルマ選びとしてかなり示唆的だと私は感じます。
憧れだけで古いスポーツカーへ突っ走るのではなく、これから先の維持のしやすさまで考えて新しいロードスターを選ぶ。60代から趣味車を楽しむなら、この視点はとても大切ではないでしょうか。
なぜ60代でロードスターRFを選んだのか?
K&Nさんが選んだのは、ソフトトップモデルではなくロードスターRFでした。
RFは電動開閉式のメタルルーフを備えたモデルです。
K&NさんがRFを選んだ理由のひとつがエンジンでした。当時の国内向けソフトトップモデルが1.5Lエンジンだったのに対し、RFは2.0Lエンジンを搭載しています。
さらにK&Nさんの2019年式に関係する2018年の改良では、最高出力が従来の158psから184psへ高められていました。
試乗したK&Nさんは、そのトルクの余裕を気に入ったそうです。
もうひとつの理由が、奥さまの実家が降雪地域にあることでした。
雪の降る地域へ帰省するときには、幌よりもしっかりした屋根を持つクルマに近い室内環境が欲しい。その点でもメタルルーフを備えるRFが自分の使い方に合っていたというわけです。
電動ルーフは約13秒で開閉でき、その動作やメーター内に表示される開閉アニメーションもお気に入りだと紹介されています。
そして、K&NさんはMT車を選択しました。
これまで所有したクルマはすべてマニュアル車で、本業のタクシー運転でも会社に4台しか残っていないというMT車を好んで使っているそうです。
還暦祝いの赤いちゃんちゃんこになぞらえ、ボディカラーも赤を選びました。
このエピソードを読むと、60代のロードスター選びで大切なのは「若い人と同じ仕様を選ぶこと」ではないと分かります。
自分がどのように使いたいのか、自分が何を楽しいと感じるのかを優先すること。
RFかソフトトップか、MTかATかについても、年齢ではなく生活スタイルや身体の状態に合わせて決めればよいのです。
60代のロードスターで気になる乗り降りはどうなのか?
ここが、この記事を読んでいる方にとって一番気になるところでしょう。
ロードスターはスポーツカーですから、軽ハイトワゴンやミニバンなどと比べれば、乗り降りしやすいクルマとは言いにくいです。
高齢者が乗り降りしやすいクルマの一般的な条件には、
- シートが腰に近い高さにある
- フロアが低く段差が少ない
- ドア開口部が広い
- 体を支えやすいグリップがある
- 狭い場所でも乗降しやすいスライドドアを備える
といった特徴があります。
ロードスターは、この方向とはかなり違います。
スポーツカーは重心を低くし、ドライバーが路面に近い感覚で走れるよう、着座位置が低く設定されています。
運転するときにはこの低さが「クルマと一体になっている感覚」につながるのですが、乗降時には逆に、腰を深く下ろしたり、低い位置から立ち上がったりする必要があります。
例えるなら、普通の椅子に座るというより、かなり低いソファへ腰を下ろし、そこから立ち上がる動作に近いでしょう。
若いころには気にならなかった動作でも、60代になって膝や腰の状態が変化すると「あれ、思ったより大変だな」と感じる場合があります。
またロードスターは2ドアです。
ヒンジ式の長めのドアを開いて乗り降りするため、隣のクルマとの間隔が狭い駐車場では、十分にドアを開けられない場合があります。
ロードスターに乗ること自体は問題なくても、スーパーの狭い駐車場でドアを半分しか開けられず、そこから身体をひねって降りるとなると話が変わってくるのですね。
ですから「ショールームで座れたから大丈夫」で終わらせず、できれば実際の駐車環境に近い状態で何度か乗り降りすることをおすすめします。

ロードスターの低いシートは腰に悪い?実例では意外な評価も
では、シートが低いロードスターは長時間運転もつらいのでしょうか。
ここは「乗り降り」と「座って運転している最中」を分けて考える必要があります。
K&Nさんは、実際にロードスターへ乗ってみた感想として、ノーマルシートでも腰に負担を感じにくく、長時間乗っていられるという趣旨の評価をしています。
つまり、低いシート=運転中も必ず腰がつらい、とは限らないのですね。
これはロードスターを検討する60代にとって重要なポイントです。
乗車するときには低い姿勢まで身体を下げる必要がある一方、着座してしまえば、身体に合ったドライビングポジションを取れる人もいます。
K&Nさんはロードスターについて、自分の手足の動きに応じてクルマが反応してくれる感覚を高く評価していました。
MR2にも似た「操作した通りにクルマが動く」感覚があり、タイヤの状態もドライバーへ伝わってくるところに魅力を感じているそうです。
ここにロードスターが長年支持されている理由があります。
単純に速いから楽しいのではありません。
アクセルを踏む、ハンドルを切る、シフトを変える。そのひとつひとつにクルマが素直に反応するため、一般道の速度域でも運転そのものを味わいやすいのです。
60代になると、「何馬力あるか」「何秒で100km/hに達するか」よりも、こうした日常の速度で感じられる楽しさのほうが重要になる方も多いのではないでしょうか。
ただし身体の状態には個人差があります。
K&Nさんが快適だから、自分も同じとは限りません。
腰、膝、股関節などに不安がある方は、10分座るだけで判断せず、可能ならある程度の時間をかけて試乗してみましょうね。
60代でロードスターを買う前に確認したい5つのポイント
60代からロードスターを楽しむうえで、「年齢」という数字だけを見る必要はないと私は考えています。
むしろ確認したいのは、今の自分の身体と生活にロードスターが合っているかです。
1.乗車するときに腰をスムーズに下ろせるか
まず運転席へ入り、シートへ腰を下ろしてみましょう。
一度だけではなく、できれば何度か繰り返します。
最初は期待感でいっぱいですから、「全然平気だ」と感じやすいものです。そこで3回、4回と乗り降りすると、自分の膝や腰への負担が少し見えやすくなります。
2.低い位置から無理なく立ち上がれるか
私はむしろ、乗るとき以上に降りるときを注意して見てほしいと思います。
低いシートから身体を持ち上げるには、膝や太ももに一定の力が必要です。
片手を地面につきたくなったり、ドアへ強く体重を預けないと立ち上がれなかったりする場合は、将来的な負担も含めて慎重に考えたいところです。
3.狭い駐車場でも降りられるか
展示場では通常、ドアを大きく開けられます。
しかし現実の生活では、隣にクルマが止まっていますよね。
ロードスターはスライドドアではありませんから、狭い場所ではドア開度が限られます。
可能なら販売店スタッフに相談して、ドアを半分程度しか開けない状態でも乗降できるか試してみると参考になります。
4.クラッチ操作に無理がないか
MTを希望する方は、クラッチ操作も確認しておきましょう。
「スポーツカーならMTでなければ」と無理をする必要はありません。
K&Nさんは長年MTに乗り続け、本業でもMT車を好んで運転している方です。その経験があるからこそ、ロードスターでも自然にMTを選べたのでしょう。
一方、久しぶりのMTで左脚が疲れるならATも立派な選択肢です。
大切なのは、MTを所有したという満足ではなく、5年後、10年後もロードスターに乗りたいと思えることです。
5.自宅駐車場から実際の生活を想像する
ここは見落とされがちです。
ロードスターを自宅駐車場に置いた場面を想像してみましょう。
運転席側のドアは十分開きますか。
毎日の買い物に使うなら荷物の置き場に困らないでしょうか。
夫婦で旅行するなら2人分の荷物を積めるでしょうか。
ロードスターは2人乗りであり、実用性を最優先したクルマではありません。
その不便さまで含めて「これでいい」と思えるかが、満足度を大きく左右します。
60代だからこそロードスターが楽しくなる理由もある
ここからは私見です。
私は、ロードスターはむしろ60代という年代と相性のよい趣味車になり得ると考えています。
若いころは、家族の人数、子どもの送り迎え、仕事で使う荷物、住宅ローンなど、クルマを選ぶにもいろいろな制約がありますよね。
「本当は2シーターが欲しいけれど、チャイルドシートを載せなきゃ」
そんな時期にはロードスターを選びたくても、なかなか選べません。
ところが子育てが一段落し、夫婦2人あるいは自分中心にクルマを選べるようになると、初めて「便利だから」ではなく「好きだから」という基準が前に出てきます。
K&Nさんも、ロードスターによって得たものは単なる走りの楽しさだけではありませんでした。
ロードスター関連の書籍を集め、SNSを活用し、ミーティングへ積極的に参加。関東から九州まで、多くの友人ができたそうです。
さらに、ロードスターにまだ乗ったことがない人を助手席へ乗せて魅力を体験してもらう「ロードスターエクスペリエンス」に、横浜と神戸の両会場でオーナードライバーとして参加しました。
ひとり親家庭の親子をロードスターに乗せて街を走る「ロードスターサンタドライブ」にも参加しています。
クルマが単なる移動手段ではなく、人と人をつなぐ入口になったのですね。
これは60代の趣味を考えるうえで、なかなか興味深いところです。
退職や子どもの独立などによって生活環境が変わる年代では、新しい人間関係を作る機会が以前より減ることもあります。
そこへ「同じクルマが好き」という共通点がひとつあるだけで、年齢も職業も地域も違う人と自然に会話できます。
ロードスターの価値を価格表だけで測れない理由は、こんなところにもあるのでしょう。
60代のロードスターは「終のクルマ」になり得るのか
K&Nさんは、このロードスターをできれば人生の「終のクルマ」として大切に乗り続けたいと語っています。
その言葉には重みがあります。
購入しただけで満足したクルマではありません。
6年間で8万3000kmを走り、山陰や九州へ出かけ、多くの仲間と出会い、イベントにも参加してきたうえでの言葉だからです。
1995年の阪神淡路大震災で被災した経験を持つK&Nさんは、防災士の資格も取得しています。
能登半島地震の際には親族が能登町にいたこともあり、ロードスターで現地支援へ向かったそうです。
悪路向けのSUVではないロードスターですが、阪神淡路大震災当時、荒れた路面をプレリュードで走った経験を生かし、下まわりへ注意しながら走行したと説明しています。
もちろん、これは「ロードスターが災害時に適している」という意味ではありません。
むしろ注目したいのは、K&Nさんにとってロードスターが趣味の休日だけ乗る特別な道具ではなく、人生のさまざまな場面を共にする相棒になっていることです。
本人が最後に語ったのも、クルマの速さや性能ではありませんでした。
ロードスターを通じて関東から九州までできた友人が何よりの財産だ、という趣旨の言葉でした。
私はここに、60代からロードスターへ乗る意味が凝縮されているように感じます。
若いころのスポーツカーは「速さ」や「格好よさ」が中心だったかもしれません。
でも60代になってからのスポーツカーは、休日に出かける理由になったり、人と出会う理由になったり、これから先の人生へ小さな予定を作ってくれたりする。
そう考えると、ロードスターは単なる低い2人乗りのクルマではなくなります。
60代のロードスター選びは「乗れるか」より「乗り続けられるか」で考えたい
60代でロードスターを検討するなら、私は「今乗れるか」だけではなく、数年後も無理なく乗り続けられそうかまで考えることをおすすめします。
現在60歳で問題なく乗り降りできても、65歳、70歳と年齢を重ねれば身体の状態が変わる可能性があります。
だからといって、将来の変化を怖がって今の楽しみを全部諦める必要もありません。
大切なのは、自分の身体を過信せず、定期的に「まだ安全に楽しめているか」を確認することです。
購入前には、ぜひ実車で次の順番を試してみてください。
まずドアを大きく開けた状態で乗り降りします。
次に、ドアを半分程度しか開けられない状態で乗り降りします。
そして運転席へ座ったら、ハンドル、ペダル、シフト、ミラーを自分に合わせ、20〜30分程度の試乗が可能なら市街地を走ってみます。
最後に試乗を終えた直後、もう一度降りてみてください。
最初より膝や腰が重く感じないかを見るのです。
この「試乗後の降車」は意外と大切です。
展示車へ元気な状態で1回乗っただけでは分からなかった負担が、運転後には見えてくることがあります。
また、MTとATで迷うなら両方試してみるのもよいでしょう。
「昔スポーツカーに乗っていたからMT」という思いも素敵ですが、左脚の負担が気になるのであればATで長く楽しむ考え方もあります。
ロードスターを選ぶ目的は、若いころの自分を証明することではありません。
これからの自分が笑顔で運転できる一台を選ぶことですよね。
まとめ:60代のロードスターは身体との相性を確かめれば十分楽しめる
60代でもロードスターを楽しむことは十分可能です。
実際にK&Nさんは還暦を機に2019年式ロードスターRF VSを購入し、約6年間で8万3000kmを走行。山陰や九州へ出かけ、ロードスターを通じて全国に仲間を増やしています。
一方、ロードスターは低い着座位置を持つスポーツカーです。
高齢者の乗降に向く低床ミニバンや軽ハイトワゴンと比べると、シートへ身体を深く下ろす動作、低い位置から立ち上がる動作、狭い駐車場で身体をひねる動作は負担になりやすいでしょう。
だからこそ、60代のロードスター選びではカタログスペックだけで決めず、乗る、降りる、運転する、もう一度降りるところまで試してほしいと思います。
その一連の動作に無理がなく、「もう少し走っていたいな」と自然に感じられたなら、年齢だけを理由に諦める必要はないでしょう。
K&Nさんの例から見えてくるのは、ロードスターが与えてくれるものはオープンエアの爽快感やハンドリングだけではないということです。
出かける理由ができ、人との交流が生まれ、愛車と過ごす時間そのものが人生の楽しみになる。
私自身、60代からのクルマ選びでは「あと何年乗れるか」だけでなく、その何年をどう楽しく過ごせるかという視点も大切だと考えています。
乗り降りに無理がない。それを実車で確認できたなら、ロードスターは60代から始める趣味としても、これから長く付き合う「終のクルマ」候補としても、十分検討する価値のある一台でしょう。
よくある質問
60代でもロードスターの長距離運転はできますか?
身体との相性が合えば可能です。紹介したK&Nさんは還暦でロードスターRFを購入し、6年間で8万3000kmを走行。山陰や九州など遠方にも出かけています。
ただし、長時間座った際の腰や脚の疲労には個人差があります。購入前に短時間の着座だけで判断せず、可能ならある程度まとまった時間の試乗で確認しましょう。
60代にはロードスターの乗り降りはきついですか?
一般的な軽ハイトワゴンやミニバンと比較すれば、負担は大きくなりやすいです。
ロードスターはシート位置が低いため、腰を深く下ろす動作と、低い位置から身体を持ち上げる動作が必要になります。膝や腰に不安がある場合は、実車で数回繰り返して乗り降りしてみることが重要です。
60代ならロードスターはMTとATのどちらがおすすめですか?
年齢だけで決める必要はありません。
長年MT車に慣れていてクラッチ操作に負担がなければMTを選ぶ楽しみがあります。一方、渋滞や長距離で左脚の疲れが気になるならATも現実的です。数年後も無理なく楽しめるほうを選ぶのがおすすめです。
執筆:杉原健一(モーターライフ・アドバイザー)



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