55歳の車購入は、「今払えるか」ではなく、60代になっても無理なく持ち続けられるかで判断するのが基本です。
今の車の状態、ローン完済年齢、年間維持費、定年後の用途、10年後の運転しやすさ。この5項目を並べると、「今買うべきか、待つべきか」がかなり見えやすくなります。
55歳で車を買うべき?まず確認したい5つの判断基準
55歳で車を買うべきか迷ったら、結論として次の5項目を確認してみてください。
- ①今の車をあと何年安心して使えるか
- ②ローンを何歳で完済できるか
- ③購入後の年間維持費はいくらになるか
- ④60歳・65歳以降に車を何に使うか
- ⑤10年後でも運転・乗り降りしやすいか
この5つに大きな問題がなければ、55歳での新車購入や買い替えは十分に現実的です。
反対に、住宅費や教育費などの固定費が重く、ローンが定年後まで長く残るうえ、現在の車にも大きな不満がないなら、急いで買い替えない選択にも合理性があります。
55歳という年齢が少し特別なのは、現役時代と60代の生活をちょうどまたぐ位置にいるからです。
厚生労働省によると、2025年4月1日からは高年齢者雇用確保措置の経過措置が終了し、65歳未満を定年とする事業主には、「定年制の廃止」「65歳までの定年引き上げ」「希望者全員を対象とする65歳までの継続雇用制度」のいずれかが求められています。
さらに厚生労働省の令和7年「高年齢者雇用状況等報告」では、65歳までの雇用確保措置を実施済みの企業は全国で99.9%となっています。
ただし、これは「60歳以降も今と同じ給料が続く」という意味ではありません。
働き方や給与体系は勤務先によって変わります。だから55歳では、「働ける年齢」だけを見るのではなく、60歳以降に収入が変わってもその車を維持できるかまで考える必要があるのです。
国税庁の「令和6年分 民間給与実態統計調査」では、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は478万円、男性は587万円でした。
ただ、全国平均はあくまで平均です。
50代だから収入に余裕があるだろう、と考えるよりも、自分自身の現在の手取り額と60歳以降の収入見込みを使って判断したほうがずっと現実的ですよね。
私がディーラーの店頭で50代後半のお客様と話していた頃も、若い世代とは相談内容が少し違いました。
「どの車が欲しいですか?」より先に、「ローンは何歳で終わりますか」「お子さんが独立した後もこの大きさが必要ですか」「退職後も毎日乗りますか」といった話をすることが増えてきます。
55歳で買って10年乗れば65歳です。
つまり今回選ぶ一台は、単なる次の車ではなく、50代後半から60代前半の暮らしをつなぐ車になる可能性が高いのです。
55歳・定年前に新車を買うメリットは?完済年齢を決めやすい
55歳で新車を買うメリットの一つは、現役の給与収入があるうちに購入費と返済計画を具体化しやすいことです。
ただし、「まだ働いているからローンを組めるだろう」と急いで契約するのはおすすめしません。
55歳からの自動車ローンでは、月々の返済額より先に完済年齢を見てほしいからです。
たとえば三菱UFJ銀行の「ネットDEマイカーローン」は、2026年8月時点の申込条件として、申込時に満18歳以上で、完済時に満70歳の誕生日までであることを挙げています。
さらに、前年度の税込年収200万円以上、勤続または営業年数1年以上などの条件があります。年金収入のみの場合は対象外とされています。
これはあくまで一つの商品例であり、金融機関によって申込年齢、完済年齢、年収、勤続年数、借入期間などの条件は異なります。
ですから「55歳なら何年借りられるか」ではなく、自分の場合は何歳まで返すことになるのかを確認することが大切です。
たとえば300万円を年3%、元利均等返済、ボーナス払いなしで借りると仮定してみましょう。
返済期間 月々の返済額の目安 総支払額の目安 55歳で借りた場合
3年 約8万7,200円 約314万円 58歳で完済
5年 約5万3,900円 約323万円 60歳で完済
10年 約2万9,000円 約348万円 65歳で完済
※年3%固定と仮定した単純試算です。実際の金利、手数料、返済方式、借入条件によって金額は変わります。
同じ300万円でも、5年と10年では意味がかなり変わりますよね。
10年返済なら月々は約2万9,000円まで抑えられますが、65歳まで支払いが続きます。
5年なら月々の負担は大きくなるものの、60歳で完済できます。
ここで見るべきなのは、「どちらの月額が安いか」ではありません。
60歳以降に収入が変わったとき、残った返済をどう感じるかです。
私が店頭で相談を受けるなら、車種を細かく決める前に「何歳で払い終えたいですか」と確認します。
55歳の月3万円と、再雇用などで収入が変わった後の月3万円では、家計に占める重みが同じとは限らないからです。
もちろん、10年ローンが悪いという話ではありません。
60歳以降も安定した収入があり、預貯金を残すためにあえて返済期間を長く取る考え方もあります。
大切なのは、「借りられる期間いっぱいまで借りる」のではなく、自分の働き方の節目から逆算して返済期間を選ぶことです。
55歳で買い替える前に、今の車をあと何年乗れるか確認しよう
新車を見に行く前に、私は一度だけ反対方向から考えることをおすすめします。
「買い替えなかった場合、今の車を65歳まで安心して使えそうか」という視点です。
日本自動車工業会が2026年4月14日に公表した「2025年度 乗用車市場動向調査」では、前に保有していた車の平均保有期間は7.2年でした。
10年を超えて保有した人も3割弱を占め、新車として購入した車の平均保有期間は7.3年となっています。
つまり、長く乗ること自体は特別なことではありません。
一方で、「平均7.2年だから7年で買い替える」「10年以上乗っているから危険」と機械的に決めるのも違います。
車の状態は、年式だけでは判断できないからです。
走行距離、保管環境、整備履歴、使い方などによって、必要になる整備や修理は大きく変わります。
たとえば今の車が8年目なら、55歳から65歳まで乗ると18年目になります。
そこまで乗るのであれば、タイヤ、バッテリー、ブレーキなどの消耗品だけではなく、車種や状態によってはエアコン、足回り、電装関係などの修理が必要になる可能性も考えておきたいところです。
だから見るべきなのは、「何年目か」だけではありません。
次の車検までに必要な整備費。
その後5年間ほどで予想される消耗品。
最近増えてきた故障や不具合。
そして、現在の車に付いている安全装備。
これらを整理して、今の車へ今後かけるお金と、買い替え後の負担を比較するのです。
車検が来るから。
55歳になったから。
周囲が新車へ買い替えたから。
これだけでは、数百万円を使う理由としては少し弱いですよね。
反対に、故障が続き、「今度はどこが悪くなるだろう」と毎日の移動そのものが不安になっているなら、買い替えにはお金だけでは測れない意味があります。
ディーラーでお客様と話していると、「修理代が高いから」よりも、「出先で止まらないか心配だから」という理由で買い替えを決める方もいました。
車は毎日使う生活道具です。
安心して出掛けられることも、立派な価値だと私は考えています。
定年前の新車購入は「10年後の運転しやすさ」と安全装備で選ぶ
55歳で車を買って10年乗るなら、今の自分だけに合わせて選ばないことも大切です。
65歳になった自分が、その車を使っている場面を少し想像してみましょう。
乗り降りは楽でしょうか。
狭い駐車場でも扱いやすいでしょうか。
前方の死角は少ないでしょうか。
後ろを振り返る負担は大きくないでしょうか。
スーパーへ行くときも、高速道路を走るときも気負わず運転できそうでしょうか。
新車を見ると、どうしてもデザインや大きなディスプレイ、加速性能などに目が向きますよね。
もちろん、それらも車選びの楽しさです。
ただ55歳以降の一台では、私はそれと同じくらい視界、乗降性、取り回し、安全運転を支える装備を重視します。
たとえば確認したいのは、衝突被害軽減ブレーキ、誤発進抑制機能、車線逸脱に関する警報や支援、後側方の確認を助ける機能、周囲を映すカメラなどです。
こうした装備があるから事故を防げる、と断言することはできません。
安全確認の主体はあくまで運転者です。
それでも運転支援機能は、私は「注意力の代わり」ではなく「もう一人の確認役」として考えると分かりやすいと思っています。
55歳では「なくても困らない」と思う機能が、10年後にはありがたく感じられることもあるでしょう。
そして、カタログ以上に大切なのが試乗です。
試乗するときは、一度乗って終わりにせず、
- 運転席へ3回乗り、3回降りる
- 自分でバック駐車する
- 左右と斜め後方の見え方を確認する
- ハンドルを大きく切って取り回しを見る
- ブレーキとアクセルへ自然に足を移せるか確認する
といった動作を試してみてください。
一度だけ乗ると、新車特有の静かさやきれいな内装に気持ちが引っ張られます。
ところが何度か乗り降りすると、「毎回少し頭を下げるな」「足を高く持ち上げるな」といった小さな違和感が見えてくることがあります。
毎日使う車では、その小さな違和感が10年積み重なります。
55歳からの試乗では、「格好いいか」に加えて、10年付き合っても疲れにくそうかを見てみてくださいね。

55歳の車選びは、定年後の用途と年間維持費をセットで考える
55歳で買う車の大きさは、今の家族構成だけでなく、60代で最も多く使う場面から決めると失敗しにくくなります。
日本自動車工業会の「2025年度 乗用車市場動向調査」では、車の主な使用用途は「買物・用足し・他」が4割強、「通勤・通学」が3割弱でした。
現在は毎日通勤していても、数年後には車の役割が変わる可能性があります。
たとえば子どもが独立すれば、大人数で乗る機会が減る家庭もあります。
反対に、定年後に夫婦で旅行する機会が増えるなら、高速道路での安定感や荷室の使いやすさが重要になるでしょう。
親の通院や買い物。
孫の送迎。
趣味の道具を積んで出掛ける。
夫婦旅行を楽しむ。
60代の車には、意外といろいろな役割がありますよね。
そこで一度、「65歳の自分の1週間」を紙に書いてみてください。
近所の買い物中心なら、取り回しのよい軽自動車やコンパクトカーが候補に入りやすくなります。
高速道路を使った長距離移動が多いなら、乗り心地や静粛性、運転支援機能も重視したいところです。
一方で、年間走行距離が大きく減る予定なのに、今までと同じ大きな車を持ち続ける必要があるのかは考えてみてもよいでしょう。
そして用途と同時に必ず確認したいのが年間維持費です。
車を買った後には、燃料代、任意保険、自動車税または軽自動車税、車検、整備、タイヤ、バッテリーなどの支出が続きます。
車両価格300万円が払えるからといって、その車を10年間無理なく維持できるとは限りません。
たとえば説明用に、維持費が年間40万円かかる家庭を考えてみます。
300万円を年3%・5年で借りれば、月々の返済額は約5万3,900円です。
年間のローン返済額は約64万7,000円ですから、維持費40万円と合わせると、ローン返済中の車関連支出は年間約105万円になります。
月平均では約8万7,000円です。
一方、10年返済なら月々の返済額は約2万9,000円となり、年間維持費40万円を加えた月平均負担はおよそ6万2,000円になります。
ただし、その支払いは65歳まで続きます。
※年間維持費40万円は説明のための仮定です。実際の金額は車種、走行距離、保険条件、駐車場代、整備状況などによって大きく変わります。
こうして計算すると、「月3万円なら買えそう」という見え方が少し変わりますよね。
55歳の車購入では、
ローン返済額+維持費+住宅費など他の固定費
まで同じ家計の中に並べて考えてみてください。
車だけ別の財布からお金が出ていくわけではありません。
だからこそ「買える価格」ではなく、持ち続けても生活の楽しみを削りすぎない価格を探すことが大切なのです。
55歳なら新車と中古車どちらを選ぶ?安全装備と総予算で比較する
55歳だから新車、老後が近いから中古車、と年齢だけで決める必要はありません。
必要な安全装備と総予算を先に決め、新車と高年式中古車の両方を比較するのが現実的です。
新車のメリットは、比較的新しい世代の安全装備を選びやすく、色やグレード、メーカーオプションなども希望に合わせやすいことです。
10年前後乗るつもりなら、最初から自分で整備履歴を管理していける安心感もあります。
一方、中古車なら、同じ予算でも上位グレードや装備が充実した車が候補に入ることがあります。
特に3〜5年程度の高年式車やメーカー系の認定中古車は、「新車価格は少し負担だけれど、安全装備は妥協したくない」という人にとって比較する価値があります。
中古車を見る際は、価格だけではなく、修復歴、点検整備記録、保証、タイヤなど消耗品の状態、安全装備の内容を確認してください。
さらに注意したいのは、同じ車名でも年式やグレードによって装備が違うことです。
「同じ○○という車だから安全装備も同じだろう」と思い込まないようにしたいですね。
私なら予算250万円で比べる場合、「新車か中古車か」という看板よりも、65歳になった自分が必要とする装備が揃っているかを優先します。
55歳から10年前後乗るなら、購入時の数十万円だけでなく、その期間をどう使えるかのほうが重要だからです。
私見:55歳は「最後の車」ではなく65歳までをつなぐ車を選ぶ年齢
ここからは私自身の考えです。
55歳になると、「今回買う車が人生最後の新車になるのかな」と考える方もいますよね。
私は、55歳の段階でそこまで決めなくてもいいと思っています。
むしろおすすめしたいのは、55歳から65歳までを快適につなぐ一台を選び、65歳前後でもう一度見直す「二段階の車選び」です。
55歳の時点では、10年後の暮らしを完全には予想できません。
60歳を過ぎても今の仕事を続けているかもしれません。
再雇用で働き方が変わっているかもしれません。
夫婦旅行が増えているかもしれませんし、近所の買い物中心になっているかもしれません。
年間走行距離も変わるでしょう。
それなら今、15年後や20年後まで決め切ろうとするより、変化があっても困りにくい一台を選ぶほうが現実的ではないでしょうか。
扱いやすいサイズ。
十分な安全装備。
無理なく払える購入費。
定年後にも重すぎない維持費。
一人でも夫婦でも使いやすい室内。
こうした条件を満たす車なら、暮らしが予定と少し違っても対応しやすくなります。
そして65歳前後になったとき、もう一度考えればいいのです。
今の車をそのまま乗るのか。
もう少し小さな車へ替えるのか。
運転支援機能がさらに充実した車へ替えるのか。
場合によっては、車の所有そのものを見直すのか。
その時点の体調、家計、利用頻度、家族構成を見て決めれば十分だと私は考えています。
逆に少し心配なのは、「最後の一台になるかもしれないから」と予算を膨らませてしまうことです。
本来300万円程度で十分だったのに、「最後だから」と400万円、500万円の車へ気持ちが動くこともあります。
もちろん、長年憧れていた車を楽しむことも素敵です。
車は単なる移動手段ではありませんからね。
ただし、その車を買ったことで65歳まで返済に追われ、旅行や趣味、家族との時間に使うお金まで減ってしまうなら、一度立ち止まって考えてみたいところです。
私は、車は人生を楽しむための相棒であってほしいと思っています。
車を買うことで60代の自由が減るのではなく、車があることで60代の楽しみが増える。
55歳の買い替えでは、そんな関係を目指してみてはいかがでしょうか。
まとめ:55歳の車購入は「65歳の自分が無理なく持てるか」で決めよう
55歳で車を買うべきかどうかは、年齢だけでは決まりません。
判断したいのは、①今の車の状態、②ローン完済年齢、③年間維持費、④定年後の用途、⑤10年後の運転しやすさの5項目です。
今の車に大きな不具合がなく、安全装備にも不満がなく、住宅費など他の負担が大きいなら、55歳だからと焦って買い替える必要はありません。
反対に、故障への不安が増えている、安全装備を充実させたい、家族構成が変わって今の車が大きすぎると感じる、といった事情があり、現役収入のうちに無理なく支払えるなら、定年前の買い替えには十分な合理性があります。
ローンを使うなら、「月々いくらなら払えるか」より何歳で完済するかを先に確認してみてください。
そして車両価格だけでなく、保険、税金、燃料、車検や整備なども含めて、60代の家計で維持できるかを考えましょう。
55歳で人生最後の車を決める必要もありません。
私は、まず55歳から65歳までを気持ちよくつなぐ一台を選び、65歳前後でもう一度暮らしに合わせて見直す方法が、多くの人にとって無理の少ない考え方だと思っています。
「いくらまでの車なら買えるだろう」と考える前に、こう自分へ問いかけてみてください。
「65歳の自分も、この車を無理なく、気持ちよく持っていられるだろうか」
その答えが「はい」なら、かなり納得できる車選びに近づいていると思いますよ。
よくある質問
55歳で新車を買うのは遅いですか?
遅いとは言えません。55歳で購入して10年乗っても65歳です。
年齢そのものより、ローンの完済年齢、定年後の収入、年間維持費、安全装備、10年後の使いやすさを確認することが重要です。
55歳で車のローンを組むなら何年がいいですか?
一律の正解はありませんが、返済期間より完済年齢を先に考えるのがおすすめです。
55歳なら5年返済で60歳、10年返済で65歳です。60歳以降に収入が変わる予定があるなら、その収入でも無理なく返済できるかまで確認しましょう。
金融機関によって申込年齢や完済年齢、年収、勤続年数などの条件は異なるため、契約前には最新の商品条件を公式情報で確認してください。
55歳なら車検前に買い替えたほうがいいですか?
車検が来るという理由だけで買い替える必要はありません。
現在の車の状態、今後必要になりそうな修理や消耗品、安全装備、買い替えに必要な総額を比べて判断しましょう。状態が良ければ、そのまま乗り続けるほうが家計に合う場合もあります。
杉原健一|モーターライフ・アドバイザー



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