
この記事では、MLBの規定打席数について解説します。
レギュラーの証とも言える「規定打席数」は、どのように決められているのでしょうか?
また、その規定は、どのようにして決められたのでしょうか?
この記事を読めば
- 規定打席数の計算のしかた
- 規定打席数ができた理由
- 規定打席数の計算式の「3.1」の理由
が分かります。
MLBの規定打席数の計算:基本となる式
規定打席数とは、リーグが発表する打撃ランキングである「首位打者」「最高長打率打者」「最高出塁率打者」の対象となるために必要な打席の数のことです。
MLBの規定打席数は、このような式で計算されます。
所属チームの試合数×3.1(小数点以下四捨五入)
例えば、自分の所属チームが100試合を消化していれば、規定打席の数は310になり、これ以下の打席の選手は、対象外になります。
MLBの規定打席数を計算する際には、チームの試合数と「3.1」という数字が重要です。
このシンプルな計算式が、選手の成績を公平に評価するための鍵となっています。
野球ファンなら、この計算方法を知っておくと、試合をもっと楽しめるかもしれませんね。

シーズンの途中で、打率、長打率、出塁率のランキングが出てきますが、規定打席数をクリアしている選手のみ対象となります。
MLB規定打席数の歴史:なぜこの基準が生まれたのか
ここで、先に「打席」と「打数」の違いについて押さえておきましょう。
打席:打者が打撃を行い、自身がアウトとなるか、塁に達した場合の記録
打数:打席数から四死球、犠打、犠飛、打撃妨害、走塁妨害の数を除いたもの
19世紀のMLBでは、まだ選手数は少なく、全選手が試合に出るのが当たり前だったため、打率も、全員の記録を比較していました。
しかし、選手数が増えて、レギュラーと控えができると、ある選手は10打数5安打で打率.500、別の選手は100打数35安打で打率.350いうことが起き、これらの選手を同じように比較できなくなりました。
そのため、ランキングは「3分の2(約66.7%)以上の試合に出場した打者」という基準が設けられました。
しばらくの間この基準が用いられましたが、「規定の試合数」という基準では、打者によって打数のばらつきが出てきてしまい問題が発生してしまいます。
1942年、ボストン・ブレーブスのアーニー・ロンバルディは、チームの試合数150試合中105試合(70%)に出場し、規定試合数はクリアしていました。
しかし、交代が多かったため、打撃成績は309打数102安打、打率.330でした。
同じナショナル・リーグで、セントルイス・カージナルスのエノス・スローターは591打数188安打で打率.319でした。
そして、当時の基準の規定試合数(全試合の3分の2以上)に達していたロンバルディが首位打者になりました。
選手 | 成績 | 打率 | タイトル |
---|---|---|---|
アーニー・ロンバルディ | 309打数102安打 | .330 | 首位打者 |
エノス・スローター | 591打数188安打 | .319 |
ここで、倍近い打数のスローターのほうが打者として優秀ではないかという議論が起き、1950年からは「規定打数400」という基準が設けられました。
すると今度は、1954年にテッド・ウイリアムスが.345という最高打率を達成したものの、四死球が136ありました。
このため、打数が386で「規定打数400」に届かず、彼より低い打率.341であったボビー・アビーラに首位打者を奪われるという事態が起きました。
選手 | 打率 | 打数 | 規定打席 | タイトル |
---|---|---|---|---|
テッド・ウイリアムス | .345 | 386 (四死球136) | 未達 | |
ボビー・アビーラ | .341 | 555 | 達成 | 首位打者 |
このため、優れた選球眼を持つウィリアムズが首位打者でないのはおかしいという議論が起こりました。
そこで、1957年から「規定打席数」を導入することが決まり、「所属チーム試合数×3.1」という基準が設けられました。
この基準が、今も適用されている「規定打席数」になります。
MLBの規定打席数が設定された背景には、公平な評価と選手の実力を正確に反映するための工夫があります。
この基準がなければ、選手の実力を正しく評価することは難しかったでしょう。
野球の歴史を知ることは、その魅力を深く理解する一歩です。

いろいろ試行錯誤を重ねて、その上でデータを集めて、今の規定になったんですね。これは、日本のプロ野球でも採用されていますね。
規定打席数の計算式「3.1」の秘密
では、「規定打席数」は「所属チーム試合数×3.1」ですが、「3.1」は何から導き出された数字なのでしょうか?
1950年から採用された「規定打数400」とは
- 1試合に2.6打数が到達すべき規定打席数とする
- 当時の試合数は154試合で、154×2.6=400.4
- 首位打者になるには400打席必要である
というところから来ているようです。
前述のとおり、1954年のテッド・ウイリアムスとボビー・アビーラの首位打者に関する問題が発生しました。
そのとき、当時首位打者を狙える打者のシーズン中の平均四死球の個数を調査したところ、1試合あたり0.5個という結果が出ました。
そのため、到達するべき打数2.6に平均四死球0.5を足した「3.1」を規定打席にすることになったようです。
「3.1」という数字は、ただの数字ではありません。
これには、選手の平均的な出場状況を反映した深い意味があります。
このようなデータに基づく計算式が、MLBの公平性を保つためには欠かせない要素なのです。

これには、諸説ありますが、一番有力と思われる説を紹介しました。
MLB規定打席数のまとめ:理解のポイント

この記事では、MLBの規定打席数について解説しました。
MLB発足当初は、選手数も少なく、全選手が全試合に出場していましたが、次第に選手数が増えて、
代打が多用されるようになると、「首位打者」「最高長打率打者」「最高出塁率打者」のタイトル争いに不都合が出てきました。
そこで、「規定打数400」という規定が作られましたが、四死球を選ぶ好打者が不利ということが発生し、さらに規定が変わり、現在の規定打席数である「所属チームの試合数×3.1」になりました。
日本のプロ野球も、この規定に則って各タイトルの選手が決まります。
数字がたくさん出てきて分かりづらいかも知れませんが、
「所属チームの試合数×3.1」回、打席に立たないと、
- 「首位打者」
- 「最高長打率打者」
- 「最高出塁率打者」
のタイトルの対象にならないと理解していただければ結構です。
MLBの規定打席数を理解することは、プロ野球の深い理解につながります。
この基準があるおかげで、選手の成績が公平に評価され、ファンにとってもわかりやすいです。
これからも、この規定を踏まえて、野球の楽しみ方を広げていきましょう。
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