60代でもSUVは、座面・フロア・ドア開口が身体に合えば、低い車より乗り降りしやすく感じることがあります。
「SUVは車高が高いから、年齢を重ねると乗りにくいのでは?」と気になりますよね。実際には全高だけでは判断できず、地面から床までの高さ、座面の位置、身体をひねらず出入りできるかを見ることが大切です。
60代でもSUVは乗り降りしやすい?車高だけでは判断できない
結論からいうと、60代だからSUVが乗り降りしにくいとは限りません。
むしろ低いセダンでは、座るときに腰を深く落とし、降りるときには低い位置から身体を持ち上げなければなりません。人によっては、この動作よりも少し高めの座面へ横移動するSUVのほうが楽に感じます。
一方で、SUVなら何でも楽というわけでもありません。
フロアが高い車では、最初の一歩で膝を大きく持ち上げる必要があります。さらに座面まで高いと、「足を上げる」「身体を持ち上げる」という二段階の動きになってしまいます。
ですから、見るべきなのはカタログに大きく書かれている全高ではありません。
私が販売現場で車選びのお手伝いをするときは、次の3点を分けて考えていました。
- 地面からフロアまでの高さ
- フロアからシート座面までの高さ
- ドア開口部の広さと身体をひねる量
この3つが自然につながっている車ほど、乗り降りは楽になります。
言い換えるなら、車高は「家の屋根の高さ」で、乗降性は「玄関の段差」に近いものです。
屋根が高くても玄関の段差が大きければ入りづらいですよね。SUVも同じで、全高より入口のつくりを見ることが大切なんです。
60代のSUV選びではシート位置をどう確認する?
60代でSUVを選ぶなら、まずドアを開けて横向きに立ち、そのまま軽く腰を落とした位置に座面があるかを確認してみてください。
乗降時に負担になりやすいのは、「低い位置までしゃがむ」「高い位置へ身体を引き上げる」という動きです。
理想は、お尻を先に座面へ乗せ、そのあと両足を車内へ入れられることです。
反対に、乗車した瞬間にステアリングやドアへ強く手をつき、腕の力で身体を引き上げているなら、座面が少し高すぎる可能性があります。
また、降りるときにも確認したいことがあります。
両足を地面へ出した状態で、無理なく立ち上がれるでしょうか。
片足だけがやっと地面へ届き、「えいっ」と身体を滑らせるように降りているなら、毎日の乗降では負担が積み重なりやすくなります。
試乗前には、次の動きを確認してみましょう。
- お尻を先に座面へ乗せられるか
- 足を大きく持ち上げず車内へ入れられるか
- 頭を大きくかがめず乗り込めるか
- 降車時に両足を安定して地面へ置けるか
- 腕で身体を強く引っ張らなくても立てるか
- 運転席だけでなく助手席・後席でも同じ動作ができるか
私はよく、「試乗は走り出す前の30秒から始まっています」と考えています。
静粛性や加速性能は走らなければ分かりませんが、乗り降りのしやすさはエンジンをかける前に分かります。
そして、この30秒は購入後、何百回、何千回と繰り返す動作につながっていくんですね。

SUVのフロア高とドア開口はなぜ重要?
SUVで特に注意したいのが、地面から乗降口の床面までの高さです。
ここで用語を整理しておきましょう。
車のカタログにある「最低地上高」は、車体下面の低い部分と地面との距離を表す数値です。乗るときに足を置くフロアやステップの高さとは別物なので、乗降性を考えるときに混同しないようにしたいところです。
低床設計の軽ハイトワゴンやミニバンでは、乗降口のステップを低く抑えた車があります。
そのため、乗り降りだけを最優先するならSUVよりミニバンや軽ハイトワゴンが有利になるケースもあります。
SUVは悪路走破性やスタイルなどを考慮して一定の地上高を確保している車が多く、床面も高くなりやすいからです。
それでもSUVを選びたい方は、数字だけを追うより、実際に片足を車内へ入れてみてください。
膝が腰近くまで上がるほど足を持ち上げなければならないなら、毎日の乗車では少し負担になるかもしれません。
もう一つ見逃せないのがドア開口です。
開口部が広ければ、身体を正面から横向きへ自然に回しながら座れます。
一方で開口が狭いと、頭を下げ、足を入れ、腰をひねるという複数の動作が同時に必要になります。
特に後席は注意してください。
SUVの中には、前席は乗りやすくても、後席ではタイヤまわりの張り出しやルーフ形状によって足の通り道が狭く感じる車があります。
夫婦で使う車や、ご家族を乗せる機会が多い車なら、運転席だけ合格でも十分ではありません。
家のソファを選ぶときに家族全員の座り心地を見るように、車も使う人それぞれが実際に乗って確認してみるのがおすすめです。
60代が比較したいSUV3車種は?ヤリスクロス・ヴェゼル・フォレスター
60代でSUVを検討するときの比較候補として、トヨタ ヤリスクロス、ホンダ ヴェゼル、スバル フォレスターは性格の違いが分かりやすい3台です。
ただし、ここで大切なのは「この3台なら誰でも乗り降りしやすい」という話ではありません。
メーカーが公開している主要諸元や装備から分かる客観情報と、実車でしか判断できない乗降動作を分けて見ていきましょう。
車種 公式情報から確認できる特徴 60代が実車で確認したい点
トヨタ ヤリスクロス 全幅1,765mmのコンパクトSUV。Z系には運転席6ウェイパワーシート設定 座面を下げた状態・上げた状態の両方で乗降
ホンダ ヴェゼル 室内幅1,445mm、室内高1,225mmなどを公式諸元で確認可能 後席へ足を入れる動作と頭上の余裕
スバル フォレスター 全長4,655mm、全幅1,830mm、全高1,730mm、最低地上高220mm 高めの床への一歩と、車幅の取り回し
ヤリスクロスは「シートを動かして自分に合わせられるか」がポイント
トヨタの公式FAQによると、現行ヤリスクロスの全幅は1,765mm。全長はグレードにより4,180〜4,200mm、全高は1,580〜1,590mmです。
大柄なSUVへ乗り換えるのは不安だけれど、少し高い目線の車に乗りたいという方には比較しやすいサイズでしょう。
さらにトヨタ公式の室内装備情報では、Z“Adventure”とZに運転席6ウェイパワーシートが標準装備されています。
前後スライド、リクライニングだけでなく、シート上下も電動で調整できます。
ここは60代の車選びでは意外に重要です。
同じ車でも、座面を少し下げるだけで足の入れやすさが変わり、少し上げるだけで降車時に立ち上がりやすくなる場合があります。
ヤリスクロスを試すなら、販売店で最初から設定されている位置だけで判断せず、シートを上下に動かして最も自然に乗り降りできる位置を探してみてください。
なお、車両寸法や装備はトヨタ自動車の現行ヤリスクロス公式情報を基準にしています。グレードや仕様変更によって設定が変わる可能性があるため、購入時には最新の公式情報を確認しましょう。
ヴェゼルは後席まで含めて身体をひねらず乗れるかを見る
Hondaの2026年3月発行ヴェゼルカタログと主要諸元表では、室内寸法として室内長2,020mm、室内幅1,445mm、室内高1,225mmまたは1,240mmが示されています。
ただし、室内寸法が広ければ乗降しやすいと単純には言えません。
ヴェゼルで見てほしいのは、後席へ片足を入れたあと、もう一方の足を無理なく引き寄せられるかです。
後席へ乗るときに足元が窮屈だと、腰と上半身をひねりながら座る形になります。
私はこの動きを、試乗中の一瞬ではなく「買い物のたびに繰り返す動作」として考えてほしいと思っています。
また現行ヴェゼルでは、Honda公式サイトでHonda SENSINGの各種運転支援機能も確認できます。
たとえばe:HEV Zでは、衝突軽減ブレーキや誤発進抑制機能、渋滞追従機能付きの運転支援などが案内されています。
もちろん、運転支援機能はドライバーに代わって安全を保証するものではありません。
それでも60代以降の長距離移動を考えるなら、乗り降りだけでなく「乗ったあとに疲れにくいか」も同時に確認する価値があります。
フォレスターは乗降性と大きさをセットで判断したい
SUBARU公式の現行フォレスター諸元では、全長4,655mm、全幅1,830mm、全高1,730mm、最低地上高220mmとされています。
ヤリスクロスやヴェゼルより一回り大きいSUVです。
したがって、フォレスターでは「座りやすいか」だけでなく、地面から車内へ最初の一歩を無理なく上げられるかをしっかり確認してください。
またSUBARUは現行フォレスターについて、アイサイトなどの安全・運転支援機能とともに、「見えやすさ」を車両設計上の特徴として案内しています。
少し高い目線と広い視界に魅力を感じる方は多いと思います。
一方、全幅は1,830mmあります。
販売店では快適に感じても、自宅の駐車場やよく行くスーパーでは車幅が気になることもあります。
60代の車選びでは、私は身体的な楽さと心理的な楽さを同じくらい重視したいと考えています。
乗り降りは楽なのに、駐車するたび緊張する車では、別の疲れが増えてしまうからです。

SUVとミニバンでは60代にどちらが乗り降りしやすい?
乗降性だけで比べれば、低床フロアやスライドドアを持つミニバン・軽ハイトワゴンのほうが有利な場合があります。
これはSUVを否定する話ではありません。
車には、それぞれ得意分野があります。
ミニバンや軽ハイトワゴンは、乗り降りのために低いステップや大きなドア開口を取りやすい設計です。
一方SUVには、高めの視点、荷室の使いやすさ、スタイル、道路状況に応じた走行性能など別の魅力があります。
ですから、私は「60代だからこのボディタイプ」と年齢だけで決めないほうがよいと思っています。
車と身体の相性は、靴選びとよく似ています。
人気の靴でも足の形に合わなければ歩きづらいですよね。
同じように、評判のよいSUVでも、自分の膝や腰の高さと合わなければ毎日の乗り降りが面倒になります。
逆に、見た目では少し高そうなSUVでも、腰を横移動させるだけで自然に座れれば、とても楽に感じることがあります。
SUVかミニバンかより、自分の身体が無理なく動けるか。
ここを基準にすると、車選びがぐっと分かりやすくなります。
60代のSUV試乗では「ドア半開き」と5年後を確認する
販売店でSUVを試乗するとき、私がぜひ試してほしいのがドアを全開にしない状態での乗り降りです。
展示車は周囲に広いスペースが取られていることが多く、ドアを大きく開ければ簡単に乗り降りできます。
ところが実生活では、自宅の駐車場やスーパーで隣に車が止まっています。
そこで初めて、「思ったほどドアを開けられない」と気づく方もいます。
長年販売現場でお客様とお話ししていると、こうした相談は決して珍しいものではありませんでした。
展示場では問題なかったのに、自宅駐車場では隣との間隔が狭く、身体を横から入れにくかった――というケースです。
これはカタログを何ページ読んでも分かりません。
販売スタッフへ相談し、安全に確認できる範囲でドアを途中まで開け、その状態でも乗り降りしてみてください。
もう一つ、私は60代のSUV選びでは「今日楽か」だけでなく5年後にも余裕がありそうかを見てほしいと思っています。
試乗時点ですでに、
「手すりへかなり力をかけないと上がれない」
「降りるとき少し飛び降りる感覚がある」
という車なら、長く乗る前提では慎重に考えたいところです。
反対に、手を軽く添える程度で座れ、両足を安定して地面へ置いて降りられる車なら、身体への余裕があります。
車は数年付き合う買い物です。
装備の豪華さも大切ですが、毎日繰り返す動作に余裕があることは、カタログには載らない大きな価値だと私は考えています。
そして夫婦で使うなら、二人とも試してください。
運転席には電動シートがあり本人は楽でも、助手席では高さ調整ができず、配偶者には座面が高すぎることもあります。
逆に助手席は乗りやすくても、運転する本人には車幅が大きすぎるかもしれません。
家族の身体の動きを見ることも、立派な性能比較です。
スペック表を眺めるだけでなく、「足をどれくらい上げたか」「どこに手をついたか」「頭をかがめたか」を見てみてくださいね。
まとめ|60代のSUVは車高ではなく「入口」で選ぼう
60代でもSUVは、地面からフロア、フロアから座面、そしてドア開口が身体に合えば、十分に乗り降りしやすい車になります。
「SUVは高いから楽」「SUVは高いから大変」と、どちらか一方で決める必要はありません。
見るべきなのは全高ではなく、実際に身体が通る入口です。
候補としてヤリスクロス、ヴェゼル、フォレスターを比べる場合も、それぞれ特徴が違います。
ヤリスクロスではコンパクトな車体とシート上下調整、ヴェゼルでは後席を含めた足の動き、フォレスターでは高めの車体への乗車動作と1,830mmの車幅を確認したいところです。
そして、乗り降りだけを最優先するなら、低床設計のミニバンや軽ハイトワゴンも一緒に試してみてください。
年齢だけで車を狭く選ぶ必要はありません。
60代は、まだまだ車で出かけたい場所がたくさんある年代ですよね。
だからこそ、見た目や評判だけでなく、何度乗っても身体が「よいしょ」と頑張らなくて済む一台を選んでみてくださいね。
よくある質問
身長が低い人はSUVのどこを確認すればいいですか?
まず、降車時に両足を無理なく地面へ置けるか確認してください。
座面が高すぎると、身体を滑らせるように降りることがあります。運転席にシート上下調整がある場合は、一番高い位置だけでなく低い位置でも試してみましょう。
SUVにサイドステップがあれば60代でも乗りやすくなりますか?
車種や体格によっては足を置く中間地点として役立つ場合がありますが、誰にでも有効とは限りません。
ステップそのものが狭かったり、かえって足を大きく外へ出す必要があったりすることもあるため、実車で乗降動作を確認することが大切です。
夫婦でSUVを選ぶ場合はどの席を試せばいいですか?
普段使う人全員が、運転席と助手席を試すのがおすすめです。
後席へ家族を乗せる機会があるなら後席も確認し、ドアを全開にしなくても足や頭を無理なく出し入れできるかまで見ておくと、購入後のミスマッチを減らしやすくなります。
杉原健一(すぎはらけんいち)
モーターライフ・アドバイザー



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