定年前に新車を購入するなら、現役時代に買える金額ではなく、退職後も無理なく維持できる金額から予算を決めることが大切です。
特に「購入後に残る現金」「ローンの完済年齢」「10年間の維持費」「将来も扱いやすい車か」の4点を先に確認すると、退職後に後悔しにくい買い方が見えてきます。
定年前に新車を購入するなら予算はどう決める?
定年前の新車購入では、車両価格から考えるのではなく、購入後の生活にいくら残すかを先に決めるのがおすすめです。
50代後半から60代は、給与収入がある一方で、その先には定年、再雇用、年金生活など収入環境が変化する時期が待っていますよね。
そのため、私は次の4つを紙やスマートフォンのメモに書き出してから車を選ぶと分かりやすいと考えています。
- 新車購入後に預貯金をいくら残すか
- ローンを利用するなら何歳で完済するか
- 退職後も年間維持費を負担できるか
- 65歳、70歳になっても使いやすい車か
たとえば、現役時代の収入なら400万円の車を購入できたとしても、それだけで「400万円が適正予算」とは言えません。
車を買った後にも、自動車税、任意保険、車検、点検、タイヤ、バッテリー、燃料、修理などの支出は続くからです。
つまり、新車価格はカーライフに必要なお金の入口にすぎないんですね。
「買える金額」と「持ち続けられる金額」は違う
金融機関や販売会社の審査で借りられる金額と、家計として無理なく返せる金額も別物です。
定年前だからこそ、「いくら借りられるか」より、
「収入が下がったあとでも、この車なら気兼ねなく持ち続けられるか」
という視点が大切になります。
高価な車を買ったものの、ガソリン代やタイヤ代が気になって出かける回数が減ってしまったら、少し寂しいですよね。
私は、定年前の車選びでは買える上限ではなく、持ち続けても不安にならない上限を探すことが重要だと考えています。
定年前に新車を買うメリット・デメリットは?
定年前に新車を購入するメリットは、給与収入があるうちに資金計画を立てやすく、新しい車にも早めに慣れられることです。
一方、現役時代の収入を基準に予算を上げすぎると、退職後にローンや維持費が重くなる可能性があります。
項目 定年前に買うメリット 注意点
資金計画 給与収入があるうちに購入できる 現役時代の収入を基準に予算を上げやすい
ローン 退職前から返済を進められる 長期ローンでは退職後まで返済が残る
車選び 通勤と退職後の両方を考えられる 退職後は用途が変わる場合がある
安全性 新しい安全装備を早く利用できる 装備の使いやすさには車種差がある
保有期間 長期保有を前提に選びやすい 10年後の自分まで想像する必要がある
特に考えておきたいのが、退職すると車の用途が変わる可能性があることです。
現在は毎日の通勤に使っていても、退職後は買い物、通院、旅行、趣味のドライブが中心になるかもしれません。
子どもが独立すれば、大きなミニバンや3列シートが必要なくなる家庭もあるでしょう。
反対に、退職して自由な時間が増えたことで、夫婦旅行やアウトドアなど長距離ドライブが増える方もいます。
ですから、「今、一番便利な車」だけではなく、5年後、10年後の暮らしにも合いそうな車を選ぶことがポイントです。
定年前に買うか、退職後まで待つか
現在の車に故障や安全面の不安があり、退職後も長く車を使う予定なら、定年前に新車へ乗り換えることには十分な合理性があります。
給与収入がある間に支払いを進められますし、新しい安全支援機能や車の操作にも時間をかけて慣れられます。
一方、退職後に転居する、車をあまり使わなくなる、現在の車にまだ十分乗れる、といった場合は急いで買い替える必要はありません。
「定年前だから最後のチャンス」と焦って買う必要はないんですね。
判断基準にしたいのは定年の日付そのものではなく、現在の車の状態と、退職後の暮らしです。
定年前の新車購入は現金一括とローンのどちらがいい?
結論としては、支払い方法より「購入後にいくら現金を残せるか」を先に考えるのがおすすめです。
現金一括なら金利負担を避けられますが、預貯金が一度に大きく減ります。
ローンなら手元資金を残せますが、利息が発生し、返済期間によっては退職後まで支払いが続きます。
現金一括は「払った後」を見る
300万円の新車を現金一括で購入すれば、当然ながら預貯金は300万円減ります。
ここで大切なのは、
「300万円持っているから買える」ではなく、「300万円払ったあとでも家計は大丈夫か」
と考えることです。
定年前から退職後にかけては、車以外にも住宅修繕、家電の買い替え、家族関連の支出など、まとまったお金が必要になる可能性があります。
そのため生活防衛資金を含め、車を買った後に残したい現金を先に決めておきたいところです。
なお、現金一括なら自動車ローンを利用した際に設定されることがあるローン会社などによる所有権留保を避けやすいという違いもあります。
ただし登録や販売条件は契約によって異なるため、購入時に車検証上の所有者も確認しておくと安心ですよ。
ローンは現金を残せる代わりに将来の収入を使う
ローンの良さは、一度に数百万円を支払わずに済むことです。
その一方で、ローンは「支払いを軽くする仕組み」というより、現在の購入代金を将来の収入から支払う仕組みと考えたほうが分かりやすいでしょう。
たとえば300万円を年3.0%、元利均等、ボーナス払いなしで借りた筆者試算では、5年返済なら月々約5万3,900円、総返済額は約323万円です。
10年返済まで延ばすと月々は約2万9,000円まで下がりますが、総返済額は約348万円になります。
月額だけを見ると10年ローンが楽に感じますよね。
しかし58歳で10年ローンを組めば完済は68歳です。
月々を小さくするほど、退職後へ返済を持ち越しやすくなるという点を忘れないようにしましょう。
金利は金融機関や審査時期によって変わるため、実際に検討するときは最新の商品条件で試算してください。
定年前のローンは何歳までに完済するべき?
定年前に自動車ローンを利用するなら、毎月の返済額より先に「何歳で完済するか」を確認することをおすすめします。
たとえば58歳で5年ローンなら63歳、7年なら65歳、10年なら68歳です。
月3万円なら払えそうに見えても、その3万円を65歳以降も払うとなれば意味が変わってきますよね。
一つの目安として私は、
「できれば退職までに完済する。難しければ、退職時点の残高を退職後の収入でも無理なく払える水準まで減らす」
という考え方が分かりやすいと思っています。
自動車ローンには年齢条件もある
ローンは、本人が希望する期間なら何年でも組めるわけではありません。
たとえば三菱UFJ銀行の「ネットDEマイカーローン」は、2026年8月時点で申込時18歳以上、完済時は満70歳の誕生日までなどを利用条件としています。
同商品は年金収入のみの場合は対象外となっており、前年度年収や勤続年数などの条件もあります。
金融機関によっては、申込時年齢や最終返済時年齢の上限が異なるため、商品を比較するときには金利だけでなく、
- 申込時の年齢条件
- 完済時の年齢条件
- 借入可能期間
- 退職後の収入をどう扱うか
- 繰上返済の条件や手数料
まで確認しておきましょう。
「審査に通る」と「安心して返せる」は同じではありません。
定年前では、この違いが若い頃以上に重要になります。
300万円の新車は10年間でいくらかかる?
300万円の新車でも、購入後10年間の費用まで含めれば、車両価格だけで家計への負担を判断することはできません。
ここではイメージしやすいよう、普通車を10年間保有する簡易モデルを考えてみます。
筆者試算として、年間1万km走行する普通車を想定し、年間維持費を次のように置きます。
- 燃料費:約12万円
- 任意保険:約8万円
- 自動車税:約4万円
- 点検・車検・整備の積立:約10万円
- タイヤやバッテリーなど消耗品:約5万円
合計すると年間約39万円です。
これは「すべての普通車で年間39万円かかる」という意味ではありません。
燃料費は年間走行距離や実燃費、ガソリン価格で変わり、保険料も等級や補償内容で大きく違います。
税額は排気量などで変わりますし、整備費も車種や年式によって差があります。
あくまで、定年前の家計を考えるための簡易モデルとして見てくださいね。
10年間なら購入費+維持費で約690万円
300万円の車を現金で購入し、年間39万円の維持費が10年間続いたと仮定すると、
300万円+39万円×10年=約690万円
となります。
つまり「300万円の車」という言葉だけでは、10年間で家計から出ていく車関連費用の全体像は見えてこないんですね。
さらに月2万円の駐車場を借りるなら年間24万円、10年間で240万円です。
単純計算では、
約690万円+240万円=約930万円
となります。
もちろん、実際の費用は毎年一定ではありません。
新車から数年は修理費が少なくても、年数が経てばタイヤ、バッテリー、足回りなどの交換が重なる可能性があります。
一方、退職後に通勤がなくなり年間走行距離が減れば、燃料費が下がることもあるでしょう。
大切なのは690万円という数字を覚えることではありません。
購入価格だけでなく、保有期間全体で家計を見る習慣を持つことです。
58歳で300万円の車を買うならどう考える?
ここで、58歳で300万円の新車を購入し、65歳前後で働き方が変わるケースを考えてみましょう。
現金一括なら利息はありませんが、購入時に300万円の現金が減ります。
5年ローンなら63歳ごろに完済できるため、退職前後までに返済を終えやすい一方、毎月の返済額は比較的大きくなります。
10年ローンなら月々は軽くなりますが、68歳まで返済が続きます。
私なら、この3つを比較するときに「月額が一番安い方法」は選びません。
見るのは、
購入直後の手元資金、退職時点のローン残高、退職後の年間維持費の3つです。
たとえば一括購入しても十分な現金が残る家庭なら、一括は分かりやすい選択です。
反対に、一括購入で預貯金が心細くなるのであれば、頭金を入れて借入額を抑えた5年程度のローンなど、中間的な方法も検討できます。
「現金かローンか」の二択ではなく、頭金と返済期間を調整するという考え方も持っておくと選択肢が広がりますよ。
定年前の新車は安全装備と10年後の扱いやすさを確認しよう
定年前に新車を選ぶなら、価格と支払い方法だけでなく、65歳、70歳になった自分が無理なく扱えるかも確認しておきたいところです。
国土交通省によると、乗用車などの衝突被害軽減ブレーキについては、国産車では新型車が2021年11月から、継続生産車が2025年12月から段階的に義務化されています。
輸入車では新型車が2024年7月、継続生産車が2026年7月から対象です。
ただし、衝突被害軽減ブレーキをはじめとした運転支援機能は、ドライバーの代わりにすべてを判断してくれる装置ではありません。
車種やシステムによって作動条件や支援できる範囲も異なります。
ですから試乗では、装備の数を比べるだけでなく、
- 衝突被害軽減ブレーキなどの安全支援機能
- ペダル踏み間違い時の加速抑制
- 駐車時に周囲を確認しやすいカメラ
- 夜間の視認性
- 運転席からの見切り
- 乗り降りのしやすさ
- 車幅感覚のつかみやすさ
- エアコンやナビの操作性
などを実際に確認してみましょう。
最近は大型ディスプレイやタッチ操作を採用する車も増えています。
見た目は先進的でも、走行中にエアコンの温度を変えるだけで戸惑うようでは、自分にとって使いやすい車とは言えませんよね。
試乗では走りだけでなく、駐車する、バックする、エアコンを操作する、荷物を積む、乗り降りするといった日常の動作も試してください。
そして、大きな車から少しコンパクトな車へ乗り換えることは、必ずしも「格を下げる」ことではありません。
駐車が楽になり、狭い道への不安が減れば、むしろ出かけられる場所は増えるかもしれません。
車の大きさを小さくすることで、行動範囲が大きくなることもある。
これは定年前の車選びで、ぜひ覚えておいていただきたい視点です。
定年前の新車は「何歳まで乗るか」から逆算しよう
定年前の車選びで私が特に大切だと考えているのが、買う年齢ではなく、手放す年齢から逆算することです。
58歳で新車を買って10年間乗れば68歳、15年間なら73歳です。
60歳で購入して15年間乗れば75歳になります。
こうして未来の年齢を書き出してみると、「今欲しいかどうか」だけで選んでいたときとは見え方が変わりますよね。
10年以上乗る予定なら、デザインやパワーだけでなく、
「70歳近くでも乗り降りしやすいだろうか」
「この車幅を気楽に扱えるだろうか」
「買い物の荷物を積みやすいだろうか」
と考えることも大切です。
もちろん、年齢だけを理由に小さな車へ替える必要はありません。
退職後にキャンプや旅行を楽しむなら、荷物をしっかり積めるSUVやワゴンが暮らしに合う場合もあります。
重要なのは、将来の年齢ではなく、将来の使い方に合っているかなんですね。
75歳以上では免許更新時の認知機能検査などが関係する年代にもなります。
これは「75歳になったら運転をやめる」という話ではありません。
「70歳ごろに一度車の大きさを見直す」「免許更新を機会に家族と今後を話す」など、カーライフの出口をぼんやりとでも決めておくことに意味があります。
定年前の新車購入では、入口となる購入価格だけでなく、出口となる手放し方まで考える。
これが若い頃の車選びとの大きな違いだと私は考えています。
定年前に新車を購入するとき私が大切だと思うこと
ここからは筆者としての私見です。
定年前の新車購入で避けたいのは、「高い車を買える最後の機会かもしれない」という気持ちだけで予算を引き上げることです。
長年働いてきた節目に、憧れていた車を手に入れる。
それ自体は、とても素敵な選択だと思います。
車は単なる移動手段ではありません。
好きな車があれば、「今日は少し遠くまで行ってみよう」と思えることがあります。
退職後の夫婦旅行や趣味、新しい場所へ出かけるきっかけにもなってくれますよね。
だからこそ、車を所有するためのお金が重荷になり、「ガソリン代がもったいないから今日は出かけるのをやめよう」と感じるほど無理をしてほしくありません。
高価な車を持つ満足より、好きなときに気兼ねなく乗れる車を持つ満足のほうが、長く続くこともあります。
そして定年前では、車の予算と老後の予算を完全に別々には考えられません。
現金で300万円使えば、その300万円は預貯金から車という資産へ移ります。
ローンなら現金は残りますが、将来の収入から毎月返済していくことになります。
だから私は、支払い方法の名称ではなく、
「購入後に現金はいくら残るか」「退職時にローンはいくら残るか」「その車を年間いくらで維持できるか」
の3つを並べて判断するのが分かりやすいと考えています。
定年前の新車購入は、単に車を買い替える作業ではありません。
人生後半のお金と、これからの移動手段を一緒に整える作業でもあります。
好きだと思えること。
無理なく維持できること。
10年後にも扱いやすいこと。
この3つが重なる場所に、その人にとって心地よい一台があるのではないでしょうか。
まとめ|定年前の新車購入は予算・ローン・退職後の維持費で判断しよう
定年前に新車を購入するなら、今の給与で買えるかではなく、退職後まで無理なく持ち続けられるかで判断することが大切です。
購入前には、手元資金、ローンの完済年齢、年間維持費、10年後の車の使い方を確認してみてください。
300万円の新車でも、年間維持費を筆者試算の39万円と仮定すれば、10年間では購入費と維持費だけで簡易的に約690万円になります。
ローンを利用するなら、月々の返済額を小さくすることだけを考えず、何歳で完済するのかも必ず確認しましょう。
そして車選びでは、今の自分だけでなく、65歳、70歳になった自分が乗り降りしやすく、見やすく、操作しやすいかも大切です。
「300万円の車を買う」と考えるより、「この車とこれから10年間付き合う」と考える。
そうすると、新車価格だけを見ていたときより、自分に合う予算も車もずっと見つけやすくなります。
定年前だからと焦る必要はありません。
「買える車」よりも、これからの暮らしの中で安心して使い続けられる車を選んでいきましょうね。
よくある質問
58歳で新車を買うならローンは何年がいいですか?
一律の正解はありませんが、完済年齢から考えることが大切です。
58歳なら5年ローンで63歳、7年で65歳、10年で68歳になります。
退職時期や再雇用後の収入を確認し、できれば退職までに完済するか、退職時点の残高を無理なく返せる範囲に抑えると判断しやすいでしょう。
退職金の何割までなら新車に使って大丈夫ですか?
「退職金の○割まで」という一律の基準で決めるのはおすすめできません。
住宅費、生活費、預貯金、年金などは家庭によって違うため、退職後に必要なお金を確保したあと、車に使える金額を決める順番が基本です。
退職金が多いから高額な車を買っても大丈夫、とは限らないんですね。
定年前なら今すぐ新車に買い替えたほうがいいですか?
必ずしもそうではありません。
現在の車に十分乗れ、退職後に車の利用が減る可能性があるなら、買い替えを待つ選択もあります。
一方、現在の車に故障や安全面の不安があり、退職後も長く運転する予定なら、給与収入のあるうちに無理のない予算で乗り換えることにはメリットがあります。
モーターライフ・アドバイザー 杉原健一



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