60代の自動車保険は、生活の変化を確認し、必要な補償を決め、同じ条件で複数社を比較するのが基本です。
保険料だけを追いかけるのではなく、退職後の走行距離や運転者、車の価値、事故時の使いやすさまで見直すと、70代を見据えた無理の少ない契約に整えやすくなります。
この記事では、60代の自動車保険について、次の順番で分かりやすく整理します。
- 60代の保険料相場を確認する
- 今の生活に必要な補償を決める
- 運転者・走行距離・車両保険を見直す
- 同じ補償条件で複数社を比較する
- 事故対応や手続き方法まで確認する
私は長年、メーカー直営ディーラーで車選びや維持費について多くのお客様とお話ししてきました。
ただし、私は保険会社の商品を比較・販売する保険募集の専門家としてこの記事を書いているわけではありません。ここでは、公開されているデータと、カーライフ相談の現場で感じてきた「60代になると何が変わるのか」という視点を組み合わせてお伝えしますね。
60代の自動車保険料はいくら?利用者平均は約3万〜6万円
インズウェブの一括見積もりサービス利用者では、60代の年間平均保険料は車両保険なし29,916円、一般型の車両保険あり59,006円です。
集計期間は2025年4月から2026年3月です。
大切なのは、この数字が全国すべての60代契約者を対象にした平均ではなく、インズウェブの一括見積もりサービスを利用した人のデータだという点です。
年代 車両保険なし 車両保険あり(一般)
40代 33,800円 62,205円
50代 31,629円 61,688円
60代 29,916円 59,006円
70歳以上 36,754円 68,546円
60代の平均を月額へ単純換算すると、車両保険なしは約2,493円、一般型の車両保険ありは約4,917円です。
ただし、59,006円-29,916円=29,090円が、そのまま車両保険を付けるための料金という意味ではありません。
車両保険ありとなしでは、それぞれ別の契約者群を集計しているため、等級、車種、補償内容、走行距離などの条件も異なります。
一般に車両保険を付ければ保険料は上がりますが、この平均差をそのまま「車両保険の付帯コスト」と読むのは正確ではありません。
自動車保険料は、主に次のような条件によって変わります。
- ノンフリート等級
- 車種・型式
- 免許証の色
- 年間走行距離
- 車の使用目的
- 運転者の範囲
- 年齢条件
- 車両保険の有無や補償範囲
同じ60代でも、条件が違えば保険料はかなり変わるわけですね。
webCGで紹介された試算では、トヨタ・プリウス、ゴールド免許、年間走行距離3,000km以下など一定の条件を置いた場合、車両保険なしの月額保険料は6等級2,220円、12等級1,941円、15等級1,850円、20等級1,394円という例が示されています。
一般型の車両保険を付けた試算では、6等級5,900円、12等級4,601円、15等級4,350円、20等級3,246円でした。
これはあくまで特定条件での試算ですが、「60代だからいくら」と年齢だけでは決められず、等級や車両保険などの条件が大きく関係することは分かります。
ですから、「平均より高いから今の保険は損だ」とすぐ判断するのではなく、平均はあくまで現在の契約を点検する入口として使ってくださいね。
60代・シニアの自動車保険は何を基準に選ぶ?
60代の自動車保険は、保険料・補償内容・事故対応・手続きのしやすさの4点で比べると整理しやすくなります。
2026年に価格.comが公表した「60代以上」の自動車保険総合満足度ランキングでは、上位3社は次の結果でした。
1位はチューリッヒ保険会社で77.07ポイント、2位はSBI損保で76.78ポイント、3位は東京海上ダイレクト[旧イーデザイン損保]で76.52ポイントです。
調査期間は2025年10月24日から11月20日、有効回答者数は4,781人で、そのうち60歳以上は34.5%でした。
ここで注意したいのは、この順位は「保険料が安い会社ランキング」ではないことです。
価格.comでは、保険料や補償内容、顧客対応などへの満足度と、回答者が各項目をどの程度重視しているかを組み合わせて総合満足度を算出しています。
したがって、1位の会社へ入れば誰でも安くなり、誰でも満足できるという意味ではありません。
私がディーラーでお客様からよく聞いたのも、
「結局、どこの保険会社が一番安いの?」
という質問でした。
お気持ちはよく分かります。
ただ、自動車保険では条件をそろえないまま金額だけ比べても、正しい比較になりません。
たとえばA社は車両保険あり、B社は車両保険なし。A社は弁護士費用特約あり、B社はなし。
それなのに年間保険料だけを比べれば、安い理由が「会社の違い」なのか「補償が少ないから」なのか分かりませんよね。
60代の保険選びでは、まず必要な補償を決め、その条件をそろえたうえで複数社を比較することが大切です。

60代の自動車保険で見直したい補償は?
60代だから補償を減らすのではなく、「家計で抱えきれない大きな損失は保険で守り、調整できる部分を見直す」と考えるのが基本です。
特に確認したいのは、運転者の範囲、走行距離、車両保険、特約の重複です。
子どもが独立したら運転者の範囲を確認する
60代になると、子どもが独立して実家の車を日常的に運転しなくなる家庭も増えてきますよね。
たとえば50代のころは、夫婦と同居する子どもが同じ車を運転していた。
その後、子どもが就職や結婚で独立し、現在は本人と配偶者しか運転していない。
このような場合は、運転者の範囲が昔の設定のままになっていないか確認してみましょう。
保険会社や商品によっては、「本人限定」「本人・配偶者限定」など、運転する人の範囲に応じた設定があります。
年齢条件も同様です。
商品によって「21歳以上」「26歳以上」「35歳以上」などの区分が設けられている例がありますが、設定できる年齢区分や適用される人の範囲は保険会社によって異なります。
特に、別居している子どもが帰省時だけ運転する場合は注意が必要です。
「子どもは別居したから対象外で大丈夫だろう」と自己判断せず、実際の契約で補償されるか保険会社や代理店へ確認してくださいね。
退職したら年間走行距離と使用目的を確認する
60代の見直しで、私はここがかなり大切だと考えています。
たとえば現役時代は、片道15kmの職場へ年間220日通勤していたとします。
通勤だけで往復30km×220日ですから、年間約6,600kmになります。
退職後に通勤がなくなり、買い物や通院、週末の外出が中心になれば、実際の年間走行距離が大きく減ることがあります。
走行距離や使用目的を保険料算定に用いる商品であれば、生活実態に合わせて申告内容を見直すことで保険料が変わる可能性があります。
もちろん、走行距離は「少なめに申告すれば安くなる」というものではありません。
現在の使い方に正しく合わせることが大切です。
60代では、車そのものを買い替えなくても、暮らし方が変わることで保険条件が変わる場合があるんですね。
車両保険は年齢ではなく「車の価値」と「自己資金」で考える
「60代になったら車両保険は外したほうがいいですか?」
これもよく迷うところですよね。
結論から言えば、年齢だけを理由に外す必要はありません。
判断するときは、車両保険金額、年間保険料、車の現在価値、事故後に自己資金でどこまで負担できるかを確認します。
たとえば車両保険金額が100万円設定されている車で、一般型から補償範囲を限定したタイプへ変更すると保険料が年間2万円下がる見積もりになったとしましょう。
この場合、「2万円安くなる」だけを見るのではありません。
どの事故が対象外になるのか、免責金額はいくらになるのか、もし大きな損害を受けたときに自分の預貯金で修理や買い替えができるのかまで確認します。
反対に、車両保険金額が下がっている古い車でも、事故後にすぐ買い替えるための現金を用意するのが難しい家庭なら、車両保険を残す意味があるかもしれません。
ここには一律の正解はありません。
「保険料をいくら削れるか」ではなく、「削った結果、自分で何円まで負担できるか」で考えると判断しやすくなりますよ。
対人・対物賠償は節約の中心にしない
私見になりますが、対人・対物賠償のように、事故時の損害が個人の家計では受け止めきれない可能性がある補償は、節約の中心にしないほうがよいと考えています。
相手のケガや死亡、住宅、店舗、車両、設備などへの損害では、賠償額が大きくなる可能性があります。
固定費を少し下げるために、大きな損害を受け止める部分まで弱くしてしまうのは慎重に考えたいところです。
保険料を整えるなら、まずは実際の運転者、走行距離、使用目的、車両保険、重複している特約などを確認するほうが整理しやすいでしょう。
人身傷害や特約は「必要額」と「重複」を見る
人身傷害保険は、自分や同乗者のケガによる実際の損害に備える補償です。
搭乗者傷害などを組み合わせている場合もありますが、60代だから特定の金額にすればよいというものではありません。
損害保険料率算出機構「自動車保険の概況 2025年度(2024年度統計)」では、人身傷害保険金額の設定には3,000万円まで、3,000万円超5,000万円まで、無制限などさまざまな契約があることが示されています。
しかし、多くの人が選んでいる金額をそのまま自分へ当てはめる必要はありません。
扶養家族、収入、預貯金、生命保険なども考えながら、自分の家計で必要な補償額を考えてくださいね。
また、弁護士費用特約や個人賠償責任特約などは、家族の別の自動車保険や火災保険などと似た補償が付いている場合があります。
ただし、名前が似ていても対象となる人や事故範囲が同じとは限りません。
重複しているように見えたら、外す前に契約先へ確認しましょう。
ダイレクト型と代理店型は60代ならどちらがいい?
自分で補償内容を確認して契約できる人にはダイレクト型、相談しながら決めたい人には代理店型が向きやすいでしょう。
「60代だから代理店型」「ネットに慣れているからダイレクト型」と年齢だけで決める必要はありません。
ダイレクト型は、インターネットや電話を通して保険会社と直接契約する方式です。
販売経路や商品設計、割引制度などの違いから代理店型より保険料が低くなる場合がありますが、誰でも必ず安くなるわけではありません。
一方の代理店型は、担当者へ相談しながら補償内容を決めやすいことが特徴です。
たとえば、
「子どもが独立したけれど運転者限定はどうすればいい?」
「この車なら車両保険を残すべき?」
「火災保険と特約が重なっていない?」
こうした疑問を一つずつ会話しながら整理したい人には、対面や電話で相談できる環境が安心につながるでしょう。
インズウェブが2024年3月1日から8月31日に一括見積もりサービス利用者へ実施したWebアンケートでは、回答者1,774人のうち60代は567人でした。
その60代が見積もった中で最も安かった保険会社として、1位チューリッヒ保険、2位SBI損保、3位SOMPOダイレクトが挙げられています。
ただし、これは「すべての60代にとってこの3社が最安」という意味ではありません。
車種、等級、走行距離、補償条件などが変われば結果も変わります。
私が60代の方に意識してほしいのは、事故の直後でも無理なく使える契約方法かという点です。
普段はパソコン操作が得意でも、事故直後には気が動転するかもしれません。
反対に、電話で長く説明するより、アプリで事故状況や対応履歴を確認できるほうが安心という方もいますよね。
契約時の便利さだけではなく、「困ったときの自分」を想像して選ぶと失敗しにくくなります。

60代の自動車保険料を安くするなら何から見直す?
保険料を見直すなら、生活の変化→補償の重複→車両保険→複数社比較の順で確認すると整理しやすくなります。
最初から「今の会社は高そうだから乗り換えよう」と考えるより、現在の契約条件が今の暮らしに合っているかを見るほうが先です。
たとえば、現役時代は通勤で年間8,000kmほど走っていた人が、退職後は年間3,000kmほどになった。
子どもが運転していたため家族全体を補償していた人が、現在は夫婦しか運転しなくなった。
10年前に新車で買った車へ一般型の車両保険を付け続けているけれど、現在の車両保険金額は当時よりかなり下がっている。
こうした「生活と契約のズレ」を一つずつ確認します。
そのうえで複数社へ同じ条件で見積もりを取りましょう。
このとき、
A社は対人・対物無制限、車両保険あり、弁護士費用特約あり。
B社は対人・対物無制限でも、車両保険なし、弁護士費用特約なし。
という状態では比較になりません。
同じ条件をそろえて初めて、保険会社による保険料やサービスの違いが見えてきます。
60代の場合、保険会社を変えなくても、生活実態へ合わせて設定を整理するだけで契約内容がすっきりするケースがあります。
反対に、現在の契約がすでに生活へよく合っているなら、無理に変更する必要もありません。
「安くすること」が目的ではなく、必要な安心に対して払い過ぎていないかを確認することが見直しの目的なんですね。
60代では事故対応とロードサービスの何を見る?
事故対応やロードサービスは、「付いているか」より、事故や故障が起きたときにどこまで対応してもらえるかを確認しましょう。
価格.comで紹介された60代加入者の体験には、高速道路でパンクして連絡したところ、レッカー車が到着し、説明も分かりやすかったという趣旨の声があります。
また、飛び石によるフロントガラス破損について、補償の可否だけでなく、保険を使用した場合の等級や今後の保険料について説明を受け、判断しやすかったという趣旨の体験も紹介されています。
ただし、こうした個別の口コミは、その保険会社のすべての契約者やすべての事故で同じ対応になることを保証するものではありません。
契約を選ぶ際の参考情報の一つとして見るのが適切です。
特に確認したいのは、次のような点です。
- 事故・故障の受付時間
- 夜間や休日の初期対応範囲
- レッカー移動の無料範囲や条件
- バッテリー上がりやキー閉じ込みへの対応
- 修理中の代車や移動費用の補償
- 電話・メール・アプリなど事故後の連絡方法
「24時間事故受付」と書かれていても、示談交渉や担当者からの詳しい連絡など、すべての業務が24時間同じ体制で動くとは限りません。
この違いは契約前に確認しておきたいですね。
また、JAFなど別のロードサービスへ加入している方もいるでしょう。
保険付帯のロードサービスと似た内容があっても、対象となる人や車、作業範囲、無料条件などが同一とは限りません。
「二重だからどちらか不要」とすぐ決めるのではなく、内容を比べてから判断してください。
60代の保険見直しはなぜ70代まで考えるべき?
60代は、今年の保険料だけでなく、退職後から70代までのカーライフに合わせて契約を整えやすい時期です。
ここからは、長年カーライフ相談に関わってきた立場からの私見です。
私が60代の自動車保険で一番気になるのは、「年齢」そのものよりも生活は変わったのに、契約だけ昔のまま残っていることです。
50代までは毎日通勤していた。
子どもも同じ車を運転していた。
家族旅行では年間1万km近く走っていた。
車も新しかったので、手厚い車両保険を付けていた。
ところが60代になると、退職で通勤がなくなり、子どもが独立し、遠出の回数も減るかもしれません。
大型の車からコンパクトカーや軽自動車へ乗り換えることもあるでしょう。
このように生活も車も変わっているのに、保険だけ前年と同じ条件で毎年更新していれば、少しずつズレが生まれます。
私はこれを、60代の保険で見落としやすいポイントだと感じています。
一方で、定年後だから何でも補償を削ればよいとも思いません。
現役時代より収入が減るのであれば、事故後に数十万円、数百万円という臨時支出を家計で吸収しにくくなる人もいます。
だからこそ、小さな出費をすべて保険で補うことと、大きな損失から家計を守ることを分けて考えることが大切です。
対人・対物など、自分では抱えきれない可能性がある損失には慎重に備える。
車両保険は、車の価値と自己資金を見ながら調整する。
特約は、本当に必要か、他契約と重なっていないかを確認する。
このように整理すれば、「ただ安い保険」ではなく、「今の暮らしに合った保険」へ近づいていきます。
もう一つ、60代で見ておきたいのが連絡手段の将来性です。
今はスマートフォンで手続きできても、70代になったときに同じ方法が使いやすいとは限りません。
逆に、紙の証券や代理店だけに頼るより、アプリで契約内容を確認できるほうが便利になる方もいるでしょう。
更新のたびに、
「この補償は今も必要か」
「この連絡方法なら事故時に使えるか」
と確認していけば、年齢とともに保険も自然に調整できます。
私なら、60代の自動車保険は「一度決めて終わり」ではなく、生活の節目ごとに少しずつサイズを合わせ直すものとして考えます。
まとめ|60代の自動車保険は生活に合わせて同条件で比較する
60代・シニアの自動車保険は、保険料の安さだけでなく、現在の生活と補償内容が合っているかを確認することが大切です。
インズウェブの2025年4月から2026年3月の一括見積もりサービス利用者では、60代の年間平均保険料は車両保険なし29,916円、一般型の車両保険あり59,006円でした。
ただし別々の契約者群の平均なので、29,090円の差をそのまま車両保険の料金と考えることはできません。
見直すときは、退職による走行距離の変化、子どもの独立による運転者の変化、車の現在価値、特約の重複を確認しましょう。
そのうえで必要な補償条件をそろえ、複数社の保険料と事故対応を比較すれば、単なる値下げではなく、今の暮らしに合った契約へ近づけます。
60代だから補償を減らすのではありません。
削った金額より、何を残したかまで確認する。
これが、70代まで安心してカーライフを続けるための自動車保険の見直し方だと私は考えています。
よくある質問
60代の自動車保険料の平均はいくらですか?
インズウェブで2025年4月から2026年3月までに一括見積もりサービスを利用した人の集計では、60代の年間平均保険料は車両保険なし29,916円、一般型の車両保険あり59,006円です。
ただし、全国すべての60代契約者の平均ではありません。等級、車種、走行距離、免許証の色、補償内容などで実際の保険料は変わります。
60代になったら車両保険は外したほうがいいですか?
年齢だけを理由に外す必要はありません。
車両保険金額、年間保険料、車の現在価値、事故後の修理・買い替え費用を自己資金で負担できるかを確認して判断しましょう。
一般型を継続するだけでなく、補償範囲を限定したタイプや免責金額の変更も比較対象になります。
60代はダイレクト型と代理店型のどちらが向いていますか?
自分で補償条件を確認して契約できる方にはダイレクト型、担当者へ相談しながら決めたい方には代理店型が向きやすいでしょう。
年齢だけで決めるのではなく、事故時の連絡方法、契約変更のしやすさ、サポートの受け方まで含めて選ぶことが大切です。
杉原健一(モーターライフ・アドバイザー)



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